堂宇だうう)” の例文
この風雨のすさまじい音の中に、この洪水こうずゐのやうになつた大破した堂宇だううの中に、本尊の如来仏によらいぶつ寂然じやくねんとして手を合せて立つてゐられるのである。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
木像もくざうしんあるなり。しんなけれどもれいあつてきたる。山深やまふかく、さとゆうに、堂宇だうう廃頽はいたいして、いよ/\けるがごとしかなり
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
古い堂宇だううは、信心の爲孫三郎が申受け、御本尊をのぞいた一切の附屬品ふぞくひんと共に、根岸の寮の廣い庭に移して、其儘まつらうといふ事に決つてゐるといふ話なのです。
昔し蕃山熊沢氏はへり堂宇だうう伽藍がらん巍々ぎゝたる今日は即ち是れ仏教衰微の時代也と、宣教師は来りて雲突計くもつくばかりの「チョルチ」を打建うちたつるも、洋々たる「オルガン」の音、粛々たる説教の声