執心しふしん)” の例文
「その娘を清水の旦那が引取ると、浪人者の大井半之助さんが附いて來て、近所に家を借りて見張つて居るんです。大變な執心しふしんですよ」
曲翠きよくすゐとふ発句ほつくを取りあつめ、集作ると云へる、此道の執心しふしんなるべきや。をういはく、これ卑しき心よりわが上手じやうずなるを知られんと我を忘れたる名聞よりいづる事也。」
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
執心しふしんし種々口説くどけどもをつとある故從ひ難しと申が夫なくんば我が心に從ふやと云ふにお梅は差俯向さしうつむきしまゝ答へを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ある若干の學課に對する特別な執心しふしんや、總ての點で卓越したいといふ望みなどが、先生たちを、特に好きな先生を喜ばせる大きな嬉しさと一緒になつて、私を勵ました。
「呆れた野郎だ。それほど執心しふしんなら飛んで行くが宜い。お前が顏を見せなきやお銀も浮ばれまい」
たゞせしに小松屋のかゝへ遊女いうぢよ白妙しろたへ執心しふしんして只今迄も度々安五郎とか申者と口論こうろんにも及びし趣き聞えたり然すれば汝大門番重五郎を殺す心は有まじけれどかれ安五郎白妙が逃亡たうばう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「尺八が執心しふしんなさうで、及ばず乍ら御相談相手になりませう。——前々から大分おやりでせうな」
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
送りける故平常つね/″\心安き得意とくいに付早速さつそく奧へしやう種々いろ/\饗應きやうおうなしけるが此の家の娘におもせといふは今年ことし十六歳にして器量きりやうも十人並にすぐれし故文右衞門は年若にて未だ妻もなき身なれば不※ふと此娘このむすめ執心しふしんなしひそかに文を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
取わけ執心しふしんなのは、井筒屋の本家筋で、今は沒落した大井筒屋の一と粒種、宗次郎といふ二十五になるイキの惡い若旦那崩れで、佛門に入つて幽澤いうたくといふのが、清水寺の清玄ほどの逆上のぼせやうで