らつ)” の例文
自然の情合から流れる相互の言葉が、無意識のうちに彼等を駆って、準縄じゅんじょうらつを踏み超えさせるのは、今二三分のうちにあった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何か變つたことがあつたら——と、この盜難を豫期するともなく、ガラツ八を附けて置いた平次、その日の朝のうちに一らつを聞込んで了ひました。
自然の情あひからながれる相互の言葉が、無意識のうちに彼等を駆つて、じゆん縄のらつみ超えさせるのは、いま二三ぷんうちにあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
らつが濟んでから、ガラツ八は今度ばかり九分通り自分の手柄にして貰つて、すつかり好い心持になつて居るのでした。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
翌る朝の辰刻半いつつはん(九時)頃、その時はもうお専は、すっかり元気を取戻し、日頃の媚態びたいへ輪をかけたような表情で、事細かに昨夜の一らつを話してくれました。
生理状態は殆んど苦にするいとまのない位、一つ事をぐるぐる回って考えた。それが習慣になると、終局なく、ぐるぐる回っている方が、らつの外へ飛び出す努力よりもかえって楽になった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「万一、拙者がこの家へ來なければ、伜金之助、人手に掛つて殺された一らつを、御目付衆に訴へる——と」
生理状態は殆んど苦にするいとまのない位、一つ事をぐる/\まはつて考へた。それが習慣になると、終局なく、ぐる/\まはつてゐる方が、らつそとへ飛びす努力よりも却つて楽になつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
翌る日の朝、八五郎は明神下の平次の家へやつて來ると、前の日の一らつを事細かに披露に及ぶのでした。
晝の一らつを娘のお京さんから聽いて、事の切迫を覺つた鞍掛宇八郎は、鳴川留之丞に直々の掛合を
それは兎も角、宇佐美直記は、昨夜の一らつをかなりたくみな話術で、平次に説明してくれました。
いゝとも、この一らつは笹野樣も御奉行樣も御存じだ。東作はお上でも持て餘した惡黨、それを
「何んだ、それぢやお千勢殺しの一らつがこんがらかつて、金六兄哥が持て餘したんだらう」
「今朝は寢起きの早いわけがあるんですよ。昨夜の一らつを聽いたんですか、姐さん」
岡つ引風情に立入つたことを訊かれる不快さと、逢引きの冒險の一らつ——武士としてあるまじき恥かしい所業を、いくらかでも嗅ぎつけて居るらしい平次の口吻くちぶりしやくにさはつた樣子です。
それより、先づ、お孃さんが、姿を隱したといふ一らつを承りませう。なアに、疲れたと言つてもたつた十五里の道を、二日で歩いた遊山旅で、時候が良いから、ろくに汗も掻きやしません。
津志田樣の仕打ちがあんまりなので、事と次第では、龍の口の目安箱にこの一らつを書いて投り込んでやると、大層な意氣込みで飛び出しましたが、それつきり戻らなかつたのでございます。
驅け付けた八五郎は、手振り身振りでこの一らつを報告するのです。
駆け付けた八五郎は、手振り身振りでこの一らつを報告するのです。
關宿の城下に起つた、二十年前の三人侍の果し合ひの一らつ
大黒屋の一らつは、それつきり忘れてしまひました。
山谷の春徳寺へ、三千兩奉納の一らつ
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)