地紙じがみ)” の例文
客は毛受けうけという地紙じがみなりの小板を胸の所へささげ、月代さかやきを剃ると、それを下で受けるという風で、今と反対に通りの方へ客は向いていた。
会津の飯豊いいで山塊の中の地紙じがみ山は、雪が扇の地紙のように消え残る為に其名を得た、しかるに地図には之を地神山と書いてあるのは誤っている。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
扇のかなめがぐるぐる廻って、地紙じがみに塗った銀泥ぎんでいをきらきらさせながら水に落ちる景色は定めてみごとだろうと思います。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
国貞の役者絵には彩色を施さざる白き地紙じがみに人物を濃く浮立たせたるもの多し。この種類のうちにて吾人は藍色あいいろの濃淡殊に美しき衣裳をつけたるものを称美す。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
他の座敷も額張りから地紙じがみまで、かなり贅沢ぜいたくな注文がついていた。腕いっぱいにやれる本式の仕事らしいので、久方ぶりに栄二は昂奮こうふんし、注文に対して自分の意見をこまかく述べた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
二絃琴をひろめようとする気持ちと、おしょさんの派手ずきとから、引幕ひきまくを贈ることもあった。藤の花の下にの敷もの、二絃琴を描いてあとは地紙じがみぢらしにして名とりの名を書いたりした。
およそちょう四方ばかりの間、扇の地紙じがみのような形に、空にも下にも充満いっぱいの花です。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(四)沢の名を冠するもの(赤石岳、荒川岳、ひじり岳、上河内かみこうち岳等其例頗る多い)、(五)雪にちなめるもの(白山、白峰しらね農鳥のうとり岳、じい岳、蝶ヶ岳、地紙じがみ山、三之字山等)
二、三の山名について (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
また山水画は『銀世界』及び『狂月望きょうげつぼう』等の絵本において石燕風せきえんふう雄勁ゆうけいなる筆法を示したり。摺物すりものおうぎ地紙じがみ団扇絵うちわえ等に描ける花鳥什器じゅうきの図はその意匠ことに称美すべきものあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)