固執こしつ)” の例文
いつでも早速に相変化転そうへんけてんするのが陣形の本質で、鶴翼かくよくでも蛇形だけいでも鳥雲ちょううんの陣でも、そのままに固執こしつしたりするのでは、死陣であって活陣ではない。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
対馬守がこれを外国公使館の敷地に当てようとしたところ、織部正が江戸要害説を固執こしつしてがえんじなかったために、怒って幽閉したのを憤おって自刃したと言う憶測だった。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
なんにもかはつたことはありやしない。多分たぶん御前おまへゆめだらう」とつて、宗助そうすけよこになつた。御米およねけつしてゆめでないと主張しゆちやうした。たしかあたまうへおほきなおとがしたのだと固執こしつした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
米国艦隊が飽くまで南西の進路を固執こしつし、一挙鹿島灘かしまなだから東京湾を突こうというのに対し、我が日本艦隊は真南から襲い懸って、一艦一機をあまさず、太平洋の底に送り込もうというのであった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
余は組合派の教師が余が最も信任するメソヂスト派の教師を罵詈するを耳にせり、ユニテリアンはオルソドックスの迷信を笑い、後者は前者の不遜異端を責むるにあらずや、その他長老派の固執こしつなる
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
たとえその方の誠意を以てしても、御着一城の者が何としても固執こしつして動かぬ場合は……官兵衛、おことは何とする?
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何にも変った事はありゃしない。多分御前おまいの夢だろう」と云って、宗助は横になった。御米はけっして夢でないと主張した。たしかに頭の上で大きな音がしたのだと固執こしつした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だから生きてもいられたし、各〻が我意、主張を固執こしつしてもいられたのだろう。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅井、朝倉の両家は、目的のため一体になっても、内輪の議論などになると、各〻が、体面を固執こしつしたり、無用な小智慧を述べたてるのに、時を費やしたり、夜半を過ぎてもまとまらなかった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
となす固執こしつは、家中のほとんどすべてが持っているものといっていい。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)