因幡守いなばのかみ)” の例文
隠岐守の屋敷の隣は一橋殿で、その向うは牧野越中守の中屋敷、つづいて大岡、酒井、松平因幡守いなばのかみ等の屋敷、それから新大橋であります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その頃、京橋の築地、かの本願寺のそばに浅井因幡守いなばのかみという旗本屋敷がありました。三千石の寄合よりあいで、まず歴々の身分です。
諏訪因幡守いなばのかみ忠頼の嫡子、頼正君は二十一歳、冒険敢為かんい気象きしょうを持った前途有望の公達きんだちであったが、皆紅の扇を持ち、今船首へさきに突っ立っている。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今朝までは何の気はいもなかったし、因幡守いなばのかみと会った時も、至極無事な容子ようすであったのに、いったい何処へ出陣するのか。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美濃の鵜飼うがいから信州本山もとやままでの間は尾州藩、本山から下諏訪しもすわまでの間は松平丹波守まつだいらたんばのかみ、下諏訪から和田までの間は諏訪因幡守いなばのかみの道固めというふうに。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
時方の叔父おじ因幡守いなばのかみをしている人の荘園の中に小さい別荘ができていて、それを宮はお用いになるのである。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
……九時の土圭とけいが鳴った。そして間もなく、御同朋頭が町奉行石谷因幡守いなばのかみの参入を報じた……直弼はうなずいて、引寄せてあった火桶を押しやった。因幡守穆清は蒼白い痙攣ひきつったような表情をしていた。
城中の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
前田犬千代に譲らせたり、その犬千代から主筋の名古屋因幡守いなばのかみをうごかしたり、躍起となって、遂に思いを実現させたことなどは、誰も知らないので
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眼の下はるかの下界に当たって、碧々あおあおたたえられた大湖水、すなわち諏訪すわの湖水であって、彼方かなたの岸に壁白く石垣高くそびえているのは三万石は諏訪因幡守いなばのかみの高島城の天主である。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
諏訪高島の城主諏訪因幡守いなばのかみは幕府閣老の一人として江戸表の方にあったが、急使を高島城に送ってよこして部下のものに防禦ぼうぎょの準備を命じ、自己の領地内に水戸浪士の素通りを許すまいとした。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、そのまま、会釈えしゃくした。名古屋因幡守いなばのかみの臣で、こよいの名代媒人みょうだいなこうど丹羽兵蔵にわひょうぞう夫婦がはいって来たのであった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寺社奉行の牧野因幡守いなばのかみ英成、久世大和守くぜやまとのかみ。また若年寄板倉伊予守だの、側用人石川近江守の姿も見える。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)