嘱目しょくもく)” の例文
旧字:囑目
特にビクターにブッシュのヴァイオリンと組んで入っている、ゼルキン(Rudolf Serkin)は最も将来を嘱目しょくもくされるだろう。
上屋敷は、八重洲河岸やえすがしの川ぞいにある。ろくは四万石、そして、彼はまだ若かった。時勢の新人で、俊才で、未来の老中をもって嘱目しょくもくされていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
几帳の陰から嘱目しょくもくしているのは、わしではなくて、わしの前にある土産のことだったのだわい……。
奥の海 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
投手の柳は新米だがその変化に富める球と頭脳ずのうの明敏ははやくも専門家に嘱目しょくもくされている、そのうえに手塚のショートも実際うまいものであった、かれはスタートが機敏で
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
津島君自身にしても、大学を好い成績で卒業して平社員ながらも前途を嘱目しょくもくされている。
小問題大問題 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
青葉の色のにじむ方に顔を向けた栖方は、「わが影をいゆく鳥や山ななめ」という幾何学的な無季の句をすぐ作った。そして葉山の山の斜面に鳥の迫っていった四月の嘱目しょくもくだと説明した。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
私が今現像しようとしている幾多の映画は眼前嘱目しょくもくの大驚異に
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
継母ははをつれた諸葛瑾しょかつきんが、呉の将来に嘱目しょくもくして、江を南へ下ったのは、さすがに知識ある青年の選んだ方向といっていい。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
九歳の少年ピアニストは早くも富裕な貴族達の嘱目しょくもくを集め、年金を約束させて、翌年から音楽の都ウィーンに、豊かな音楽修業の生活を送ることが出来たのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
かけられた其許。その御恩顧やらまた、真田昌幸が次男幸村こそは当代のくすのきか孔明かと、嘱目しょくもくされておられるだけに
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
メニューイン兄妹と組んでトリオを演奏するチェロのアイゼンベルクは、近頃非常に評判の良い青年チェリストで、その将来は嘱目しょくもくされているが、これは、事情が許せば別の項に書きたい。
「うむ。そのことも聴きおいてある。かねて、細川家でも嘱目しょくもくいたしていた人物とやら、柳生、小野もあるが、もう一家ぐらいは取立ておいてもよかろう」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真に芸術的な感じのするヴァイオリニストとして、若くて新鮮で、最も将来を嘱目しょくもくされるのは、ビクターのメニューインとコロムビアのシゲティーと、テレフンケンのクーレンカンプであろう。
だが彼の才幹は呉侯も日頃から愛していたところだし、呂蒙はなおさら深く観てその将来に嘱目しょくもくしていた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわるるか。東西両川りょうせんの人士はみな孔明なくんば魏延こそ蜀の将来を担う者と嘱目しょくもくしていたのではありませんか。またあなたもその自負信念があればこそ桟道を焼いたのでしょう
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼こそは、と五山の大徳や一般の識者からも嘱目しょくもくされておいで遊ばす大事なおん身です
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中国にも人物はすくなくないが、わけて姫路の目薬屋の息子どのは、有為な者、将来ある嘱目しょくもくあたいする男と、これは近衛家の人々からばかりでなく、摂津せっつ荒木村重あらきむらしげなどから聞きおよび
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「彼は、大江の鱖魚けつぎょだ」と、人々に嘱目しょくもくされていた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)