善知鳥うとう)” の例文
青森の親元へ沙汰さたをする、手当薬療、息子の腰が立つと、手が切れた。むかいに来た親は、善知鳥うとう、うとうと、なきながら子をくわえてかえってく。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二ではうたいの「善知鳥うとう」など、三では「阿漕あこぎ」、「鵜飼うがひ」などその適例てきれいである。幽靈ゆうれいがいして全體ぜんたい性質せいしつ陰氣いんきで、すごいものである。相貌さうぼうなども人間にんげん大差たいさはない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
を善くして、「外浜画巻そとがはまがかん」及「善知鳥うとう画軸」がある。剣術は群を抜いていた。壮年の頃村正むらまさ作のとうびて、本所割下水わりげすいから大川端おおかわばたあたりまでの間を彷徨ほうこうして辻斬つじぎりをした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
十二日午前、田中某に一宴いちえんせんせらるるまま、うごきもえせず飲みふけり、ひるいい終わりてたちいでぬ。安方町やすかたまち善知鳥うとうのむかしを忍び、外の浜に南兵衛のおもかげを思う。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
太夫聞いてさては我が能まだ上手に達せずと。人々男の小さきは生まれ付きなり、能の上手下手に係らずやと問うと、太夫、善知鳥うとう曲舞くせまいに鹿を追う猟師は山を見ずという古語を引き居る。