吸口すいくち)” の例文
次には同じようにして吸口すいくちの方をめ込み叩き込むのであるが、これを太鼓のばちのように振り廻す手付きがなかなか面白い見物であった。
喫煙四十年 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
お〆さんにも多少の感慨はあるか、金の義歯いればのチラリと光る歯で、四分一の細い吸口すいくちをくわえたまま、眉間みけんにたてしわを二本よせて、伏目になっていた。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
胸にギクリとくるものをかくして、お粂はわざと何気ない眉を馬春堂へ寄せながら、ぷッと煙管きせる吸口すいくちに息を鳴らしてかんざしを髪の根へ戻しました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手酌てじゃくで初める所を、清次はそっと煙管きせる吸口すいくち柱際はしらぎわの壁の破れをつッつくと、穴が大きくなったから。
すっかりそれを運の好い骨牌カルタ仲間に捲きあげられてしまうばかりか、時には、まだその上、おまけに自分の煙管パイプを、煙草入や吸口すいくちごとられることもあり、まかり間違えば
ステッキの尖端でその周囲を引っ掻いてみたが、吸口すいくちらしいものはどこにも見当らなかった。ただ血と灰とが混合して発生したらしいえぐい、甘い臭気がプーンとしただけであった。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
煙草たばこが好きで、いつでも煙管きせる羅宇らおれたのに紙を巻いてジウジウ吸っていたが、いよいよ烟脂やにたまって吸口すいくちまでにじみ出して来ると、締めてるメレンスの帯を引裂いて掃除そうじするのが癖で
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
久「あゝ又間違えた、煙管の吸口すいくちを洗おうと思ってわたくしの口を洗った」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)