右往左往うおうさおう)” の例文
ホースを漏れる水の為に、雨降り挙句あげくの様な泥道を、右往左往うおうさおうする消防夫達に混って、狂喜の一寸法師がチョコチョコと走り廻った。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かれと同じように、そのクロの名をよんで、右往左往うおうさおうにみだれ立った試合場しあいじょうのなかをかけめぐりつつ、手をふっている二少年がある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とうさんは、自分じぶん子供こども時分じぶん火事見物かじけんぶつかけて、消防夫しょうぼうふや、巡査じゅんさいたてられて、ぬかるみを右往左往うおうさおうしたさまおもしました。
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
歯咬はがみをして我家のかたをさして行くと、邸のあたりが非常に混雑して提灯ちょうちん右往左往うおうさおうに飛びます。
右往左往うおうさおうする寝ぼけ眼の敵の中におどりこんで、あたるを幸いと切って切って切りまくる。
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
三十年ののち、その時の二人の僧、——加藤清正と小西行長とは八兆八億の兵と共に朝鮮八道へ襲来しゅうらいした。家を焼かれた八道の民は親は子を失い、夫は妻を奪われ、右往左往うおうさおうに逃げまどった。
金将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ただいつまでも試合場しあいじょう中央ちゅうおうが大きな空虚くうきょになりッぱなしとなって、人ばかり右往左往うおうさおうしているので、さかんにガヤガヤもめている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その外、あの海岸には、数百の群集が右往左往うおうさおうしていた。ことに深山木さんの身辺には四人の子供が戯れていた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
中書ノ宮をはじめ長袖の公卿大将ばらは、うろたえに右往左往うおうさおうし、打物すら持ち忘れてただ逃げ惑った。そして手もなく討たれてゆく将も二、三にはとどまらなかった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右往左往うおうさおうする懐中電燈の光をたよりに、私は根気よく男の行動を見守っていました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
人穴城のなかで、右往左往うおうさおうしているさまを見おろしながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)