古御所ふるごしょ)” の例文
相馬そうま古御所ふるごしょの破れた翠簾すいれんの外に大きい蝙蝠が飛んでいたなどは、確かに一段の鬼気を添えるもので、昔の画家の働きである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
台所と、この上框あがりがまちとを隔ての板戸いたどに、地方いなか習慣ならいで、あしすだれの掛ったのが、破れる、れる、その上、手の届かぬ何年かのすすがたまって、相馬内裏そうまだいり古御所ふるごしょめく。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すでに古御所ふるごしょになろうとする人少なさが感ぜられて静かな時に、源氏の大将が中宮の御殿へ来て院の御在世中の話を宮としていた。前の庭の五葉が雪にしおれて下葉の枯れたのを見て
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その部屋けは割に明るい電燈が下っているけれど、うす黒くなったふすま、破れた障子しょうじ雨漏あまもりの目立つ砂壁、すすけた天井、すべての様子がイヤに陰気で、まるで相馬の古御所ふるごしょといった感じだ。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「ああとうとうこのお館も無住の古御所ふるごしょになってしまうのね」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これの合図に、相馬内裏そうまだいり古御所ふるごしょの管絃。笛、太鼓にかねを合わせて、トッピキ、ひゃら、ひゃら、テケレンどん、幕をあおって、どやどやと異類異形が踊ってでた。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その後にもここに都するの議がおこって、宋の太祖の開宝かいほう末年に一度行幸の事があったが、何分にも古御所ふるごしょに怪異が多く、又その上に霖雨ながあめに逢い、ひでりいのってむなしく帰った。