参酌さんしゃく)” の例文
先日差上げたる私案及び貴店編輯部案を参酌さんしゃくして大体のことを決定つかまつり候間諸種の点に関し御懇談仕りたく、御多忙中恐縮に存じ候得共そうらえども
すでに埋没に瀕した他の日の言い伝えを参酌さんしゃくして、解釈の手がかりを導くべきものが多いことを考えると、この集はむしろ一回の中間報告の
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それで多くの場合には各自の意見を参酌さんしゃくし折れ合って大体の価値を決め、そうして皆が十分の責任を負うというだけの自信を得た上で及落を決定する。
学位について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
最初は日本の旧習を参酌さんしゃくして欧州の法典を折衷せっちゅうし、従来の家族制を存して一等親、二等親、三等親の別を立てたのだが、この三等親は即ち権妻ごんさいである。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
僕はその人の考案も多少参酌さんしゃくして、要所々々を可なり厳重に固めてやったが、財政家だけに頗る念入りの男でね、自分で方々をコチ/\試めして見た末
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
御家門ごかもんの越後侯ですら、家中仕置不行届で領地を召しあげられ伊予の果てへ押籠おしこめになった。いかに榊原氏が御譜代でも、いざとなれば参酌さんしゃくはないのである。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その図案を参酌さんしゃくして製作に掛かった楠公像の形は一体どういう形であるかといいますと、元弘げんこう三年四月、足利尊氏あしかがたかうじ赤松あかまつの兵を合せて大いに六波羅ろくはらを破ったので
僕はあなたが仰言おっしゃった『無』それ自身充足する積極的ないのちのあるということが気になり、これを研究立証してみたくて、普通なら哲学でしょうが現代の諸事情も参酌さんしゃくして
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
太子せたまいければ、太孫をして事に当らしめたまいけるが、太孫もまた寛厚の性、おのずから徳を植えたもうこと多く、又太祖に請いて、あまね礼経れいけいを考え、歴代の刑法を参酌さんしゃく
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
以前の旅行のことなどが書いてあるのを参酌さんしゃくしてみると、この手紙の書き手は船乗りであって、その文字の綴り方や書き方をみると、彼はあまり教育のある人物とは思われなかったが
極度に参酌さんしゃくして作ったということが、よく頷かれる次第でした。
だがこんな事は決して、自分ながらも結構な事とは思っていぬのだから、読者諸君においてもこのへんのところはよく参酌さんしゃくして、そのうちのよい点だけを取るようにしてもらいたい。
わが中学時代の勉強法 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
五節供の制定には、現実生活の要求を十分に参酌さんしゃくしなかった嫌いがある。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)