卜伝ぼくでん)” の例文
旧字:卜傳
しかし土屋庄三郎も、塚原卜伝ぼくでん唯一の門弟松岡兵庫之助に学んだ腕前。ジリジリと後へ引きながらも突いて出ようと隙を狙う。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
土佐の卜伝ぼくでんに置きざりを食った剣術高慢のさむらいのように、地団駄を踏んで歯噛みをする事のていが尋常ではありません。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
世にふとの御所とよばれた国主の北畠具教とものり卿は、卜伝ぼくでん直系の第一人者であった。その権勢、その流風を慕って、由来、伊勢路の往来には武芸者のすがたも多い。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当時、足利義輝の師範役塚原卜伝ぼくでんは引退して非ず、京師には吉岡憲法けんぽうの子、又三郎が随一の者とされていた。
巌流島 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「そう言えば、岡さんはお強いでしょうね、——卜伝ぼくでん流とか聴きましたが」
卜伝ぼくでんや上泉伊勢守のように、一度は多くの従者に鷹をすえさせ、駒をひかせて、天下の往来も歩いて見たい。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木刀の主が塚原卜伝ぼくでん、もう一人の方が直江蔵人くらんど、大声で愉快そうに話して行く。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
卜伝ぼくでんの遺風など剣の流派は百を数えて余りある時世であったが、鐘巻自斎の剣法は、それらの俗間者流とはまったく趣を異にした天下の秘剣と云ってよいものであった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは塚原卜伝ぼくでんであった。薬箱を担いでいた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
東国での名人として、塚原卜伝ぼくでんや上泉伊勢守の名が代表されていた永禄の頃には、上方では京都の吉岡と大和やまとの柳生の二家が、まずそれに対立したものと見られている。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
剣道は卜伝ぼくでんの父塚原土佐守つかはらとさのかみ直弟子じきでし相弟子あいでしの小太郎と同格といわれた腕、やり天性てんせい得意とする可児才蔵かにさいぞうが、それとはもつかぬもち竿ざおをかついで頭巾ずきんそでなしの鳥刺とりさし姿。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近くは、土地の土豪、塚原土佐守卜伝ぼくでんが、そこに住んでいると聞いている。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)