北側きたがわ)” の例文
見れば北側きたがわ矢来やらいそと、人かげまばらなあとにのこって、なにかヒソヒソとささやき合ってる旅人たびびとがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜皆寝て了うたあとで、母屋おもや段落だんおちで二葉亭訳「うき草」を読んだ。此処ここは引越した年の秋、無理に北側きたがわにつぎ足した長五畳の板張いたばりで、一尺程段落になって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
けつして超凡の人では無い………としたら、北側きたがわのスリガラスの天井てんじやうから射込さしこむ柔かな光線………何方かと謂へばノンドリした薄柔うすぐらひかりで、若い女の裸體を見てゐて
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
もっとも向うのすぎのついているところは北側きたがわでこっちは南と東です。その関係かんけいもありますがそうでなくてもこっちは北側でも杉やひのきはえません。あすこのがけで見てもわかります。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それはちょうど、たち北側きたがわにつづく馬廻うままわり役の長屋ながやの近くである。そこにっている屋根やねの高い馬糧小屋まぐさごやかられたせいろうのように白いけむりがスーとめぐっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)