はず)” の例文
千代子はもとより誰彼の容赦なく一様に気易きやすく応対のできる女だったので、御嬢様と呼びかけられるたびに相当の受答うけこたえをして話をはずました。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どういうはずみか、母の眼をぬすんで二十銭銀貨を一枚ゴマ化した。そして、それの隠し場所に窮したあげく、着物の上ゲの縫目にじこんで澄ましていた。
そんなにはずまないのだけれど、もうよそうとも言えないので、干し列べた平茎の中をぶらぶらと出て行く。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
その日は落馬をしたはずみに拍車が鞍に引つかゝつて落ちきれなかつたのを、馬は縫ひぐるみを冠つて居るので分らないため、駈け込まうとして一二間引きずられるうち
(新字旧仮名) / 喜多村緑郎(著)
踊の済むのを機会きつかけに飯が出た。食ふ人も食はぬ人もあつたが、飯が済むと話がモウはずんで来ない。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
眩む眼! はず呼吸いき
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
食ふ人も食はぬ人もあつたが、飯が濟むと話がモウはずんで來ない。歸る時、誰やらが後から外套をけて呉れた樣だつたが、賑やかに送り出されて、戸外そとへ出ると、菊池君が、私の傍へ寄つて來た。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)