前肢まへあし)” の例文
仔牛ははれた通りまづ前肢まへあしを折って生え出したばかりの角を大事にくぐしそれから後肢をちゞめて首尾よく柵を抜けました。二人は林の方へ行きました。
黒ぶだう (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
前肢まへあしを岸にうちかけようとしてゐるのですが、プールの中には百人以上も子供が泳いでゐるので、その波のために、やつと上りかかつたかと思ふと、すぐまた引きずり落されるのでした。
プールと犬 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
顫へるやうに白い華奢きやしやな身をすくめ、背を聳て、ただぢつと青い射光の一点を見上げたまま、退くにも退かれず、全身の悲哀と恐怖とをたつた二つの金色の瞳に集めて、吸入るやうに前肢まへあしをそろへた
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その前肢まへあしを揃へるやうに
(旧字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
鹿しかのめぐりはだんだんゆるやかになり、みんなはかはがはる、前肢まへあし一本いつぽんなかはうして、いまにもかけしてきさうにしては、びつくりしたやうにまためて
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)