前座ぜんざ)” の例文
わたしは朝寝坊夢楽という落語家の弟子となり夢之助と名乗って前座ぜんざをつとめ、毎月師匠の持席もちせきの変るごとに、引幕を萌黄もえぎ大風呂敷おおぶろしきに包んで背負って歩いた。
梅雨晴 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ヤレまた落語の前座ぜんざが言いそうなことを、とヒヤリとして、やっひとみさだめて見ると、美女たおやめ刎飛はねとんだステッキを拾って、しなやかに両手でついて、悠々ゆうゆうと立っている。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから先はおれも知らねえ。おい、勘蔵。おれにばかりしゃべらせて、なぜ黙っているんだ。前座ぜんざはこのくらいで引きさがるから、あとは真打しんうちに頼もうじゃあねえか
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「悔い改め」を宣べ伝えることは、神の国の福音を聴かせることの必要な準備でありまして、その意味において弟子たちの地方伝道はイエス御自身の伝道の適切な「前座ぜんざ」でありました。
その刻限になると、前座ぜんざの坊主が楽屋に来るが否や、どこどん/\と楽屋の太鼓を叩きはじめる。
雪の日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一筆ひとふでつてる——(お約束やくそく連中れんぢうの、はやところとらへておけます。しかし、どれもつらつきが前座ぜんざらしい。眞打しんうちつてあとより。)——わたしはうまいなとつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その刻限になると、前座ぜんざの坊主が楽屋に来るが否や、どこどんどんと楽屋の太皷たいこを叩きはじめる。
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)