出戻でもど)” の例文
出戻でもどり乍ら二十四五の良い年増盛りを、なり振り構はず、子分達を引き廻して、父親の利助の十手を守り通して居る姿だつたのです。
「一箇月前にね。出戻でもどりというのは、どうも具合が悪くって。夕方になるとここに来て、ぶらぶらと時間をつぶしてるの。案内して上げましょうか」
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
やがて電車通でんしやどほりいへけんかりると、をとこ国元くにもとから一よめつたことのある出戻でもどりのいもうとに、人好ひとずきのよくないむづかしい母親はゝおやとがたゝめ
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
気性の勝った彼女にとって、子持ちの出戻でもどりというなりゆきはつらいことだったろう。そう考えるのが人情だと思うが、彼女は少しもそんなようすをみせなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
油絵のモデルは三沢のいわゆる出戻でもどりの御嬢さんであった。彼の母は自分の聞かない先きに、彼女についていろいろと語った。けれども女と三沢との関係は一言ひとことも口にしなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
出戻でもどりに、そう、恥をかかせるものじゃございませんよ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ではあの、壱岐様いきさまからのお出戻でもどりの。——」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)