冒頭ぼうとう)” の例文
おれはまず冒頭ぼうとうとしてマドンナ事件から説き出したが、山嵐は無論マドンナ事件はおれよりくわしく知っている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この冒頭ぼうとうに話した米人のおのれの一家のよろしきをはかるごときは、人に対して何のずるところもない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼は思いきって、手紙を投げ入れた。そしてハンドルを二、三回廻すと、箱の底へ手紙が落ちる音がした。恵子からの手紙の返事はすぐ来た。冒頭ぼうとうに「あなたは遅かった!」そうあった。
雪の夜 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
冒頭ぼうとうに一応ことわっておくがね、この話では、登場人物が次から次へとジャンジャン死ぬることになっている——というよりも「殺戮さつりくされる」ことになっているといった方がいいかも知れない。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すなわちこれはツルゲーネフの書きたるものを二葉亭が訳して「あいびき」と題した短編の冒頭ぼうとうにある一節であって、自分がかかる落葉林の趣きを解するに至ったのはこの微妙な叙景の筆の力が多い。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
砲声一発浦賀うらがの夢を破ってという冒頭ぼうとうであったから、三四郎はおもしろがって聞いていると、しまいにはドイツの哲学者の名がたくさん出てきてはなはだしにくくなった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
冒頭ぼうとうにいうがごとく僕は永く自分の身にかえりみて、我は果たして一人前の仕事をし終えたるか、我は果たして一人前の人となりしかという問題について、いささか所感を述べたが
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
先生は新刊第三巻の冒頭ぼうとうにある緒論しょろんをとくに思慮しりょある日本人に見てもらいたいといわれる。
冒頭ぼうとうに掲げた米人の言うごとく、おのおのがいさぎよい愛情から起算して、(親なり妻なり子なり、最も自分に近いゆえに最も自分に親しい情合じょうあいに基づいて)おのれの日々ひびの事務をおこたらず、百姓は百姓
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
可哀想かわいそうにこれでもまだ二十四ですぜと云ったらそれでも、あなた二十四で奥さんがおありなさるのは当り前ぞなもしと冒頭ぼうとうを置いて、どこのだれさんは二十でおよめをおもらいたの
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
という冒頭ぼうとうで四尺ばかり何やらかやらしたためてある。なるほど読みにくい。字がまずいばかりではない、大抵たいてい平仮名だから、どこで切れて、どこで始まるのだか句読くとうをつけるのによっぽど骨が折れる。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)