円天井まるてんじょう)” の例文
旧字:圓天井
円天井まるてんじょうの下には、十ばかり聖像アイコンがあるのみで、金色燦然たる天主教の聖器類は影も形もなく、装飾箔を剥がした跡さえ所々に残っていた。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
三十分ののち、彼は南蛮寺なんばんじ内陣ないじんに、泥烏須デウスへ祈祷を捧げていた。そこにはただ円天井まるてんじょうから吊るされたランプがあるだけだった。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
肩をそばだて、前脚をスクと立てて、耳がその円天井まるてんじょうへ届くかとして、かっと大口を開けて、まがみは遠く黒板に呼吸いきを吐いた——
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
慈愛ぶかい司教さまは永遠にいます父——神のごとくに見え、教会の円天井まるてんじょうのあなたに天国を見ていたのであります。
ひやゝかなる円天井まるてんじょうの陰には、そよとの風もなく、あたり蕭条しめやかに、心おのずか長閑のどかなれば、屋根低く凉しき尼寺か。夏の匂のみなぎり流るゝ、幽暗なる地下室にもたとふべけん。
ガラスの円天井まるてんじょうまで上がっていましたが、その天井からは、お日さまがさしこんで、噴水の水と大水盤すいばんのなかにういている、うつくしい水草の上にきらきらしていました。
例えばなるべく曲線を避けようとする傾向がある。「いき」な建築として円形の室または円天井まるてんじょうを想像することはできない。「いき」な建築は火灯窓かとうまど木瓜窓もっこうまどの曲線を好まない。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
そのかすかな白い一すじにみちびかれて、神々しい静かな堂内の、ひろびろした円天井まるてんじょうの下を通って、まっすぐに聖堂の入口まで来ると、そこに倒れているネルロを見出しました。
円天井まるてんじょうのすすはきじゃ』
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
薄暗うすぐらいもみの木の森のあいだ、ロクセン湖の陰気いんきな岸辺近くに、古いブレタの僧院そういんがあります。わたしの光はかべ格子こうしをとおって、広い円天井まるてんじょうの部屋へすべりこんで行きました。
が、あたりを見廻すと、人音ひとおとも聞えない内陣ないじんには、円天井まるてんじょうのランプの光が、さっきの通り朦朧もうろう壁画へきがを照らしているばかりだった。オルガンティノはうめき呻き、そろそろ祭壇のうしろを離れた。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)