公卿くぎょう)” の例文
中幕は、滝夜叉の夢の場——官女すがたの彼と、公卿くぎょう若ぎみの、藤原治世との、色もようで観客を、恍惚たらしめるに十分なはずであった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
皇后や中宮ちゅうぐうやのおそばをつとめる身分高い女房は、時にはきさいみやの妹君がつとめられたり、公卿くぎょうの娘がつとめたりする。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
人のうわさでは、これはさる公卿くぎょうの御息女とこの六郎殿と御契りがありまして、常々ふみを通わせられておられましたが、その方の御歌とか申しました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
みやびな公卿くぎょうたちに慣れた宮中の女どもには、かれらは眉をひそめさせるようなあらあらしい粗野な男たちに思えた。
(新字新仮名) / 山川方夫(著)
「その通りだ。劉表に会ってよく利害を説き、この曹操にこうを誓わせて帰ったら——汝を宮中の学府に入れ、公卿くぎょうとして重く用いてつかわすが、どうだな」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
公卿くぎょう様も有志もことごとく一網に縛りあげてしまって、而して初めてこの批准交換が出来たのである。これが安政五年五ヵ国条約といって一般に発布された。
行幸の日は親王方も公卿くぎょうもあるだけの人が帝の供奉ぐぶをした。必ずあるはずの奏楽の船がこの日も池をぎまわり、唐の曲も高麗こうらいの曲も舞われて盛んな宴賀えんがだった。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
鳥羽、伏見の戦争に動員された薩藩兵士のなかに、堀盛というその男は伍長ごちょうとして参加していた。卒を引きつれて守護した公卿くぎょうやしき清水谷きよみずだにであり、そこの食客に岡本監輔がいた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
河内介が平安朝の公卿くぎょうであったら、「杜鵑」と云う絶好の出題をとらえて、それとなく御簾の中なる恋いしい人に思いを訴えたであろうが、彼にはそんな器用な真似まねは出来なかったから
人のうわさでは、これはさる公卿くぎょうの御息女とこの六郎殿と御契りがありまして、常々ふみを通はせられてをられましたが、その方の御歌とか申しました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
ぼくの書いた新平家物語の参考書などにしても、肝腎かなめの所は、おおむね当時の公卿くぎょう日記を参照とした。
現任の官職で参議に列すれば、ただの殿上人てんじょうびとでなく公卿くぎょうに連なるわけであるが俊成はそれに失敗した。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)