ばち)” の例文
ダンディ埠頭クエイにはもうおそらく帰れぬだろうなあ。今度という今度は、いよいよいちばちかだ。われわれの北の方には鯨がいたのだ。
私さう申すと何で御座いますけれど、これでも女子をんなにしては極未練の無い方で、手短てみじかに一かばちか決して了ふがはなので御座います。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
このままじっとしていたら、め殺されるばかりだ。どうせ死ぬ命なら、この怪物を道連れに、いちばちか、命がけの冒険をやってみようと決心した。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
道具をつけての稽古ならば、体当りで微塵みじんに敵の陣形をくずしてみたり、いちばちかの初太刀しょだちを入れてみる。当れば血を吸い骨をくらうことを好むやいばと刃とでは、そうはいかない。
大変な細工さいくだ、——物干竿に匕首を挟んだのも塀の土台を踏んで行ったのも、一かばちかの芸当だが、多分、お照が欄干にもたれる癖のあることを知って、前々から用意したことだろう
勇気を出して会いさえすれば、一かばちか様子が分って、却って気持が落ちついたであろうに、なまじ逃げた為に、池内の心をはかり兼ねて、いつまでも不安が残った。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「そうだ、そのほかに方法はない。いちばちかやっつけてみるのだ」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)