元結もっとい)” の例文
名は知りませんが、去年の暮にも一度来て、村の土産みやげにするのだと云って油や元結もっといなぞを買って行ったことがあります。
半七捕物帳:28 雪達磨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
片手づきに、白襟の衣紋えもんを外らして仰向あおむきになんなすった、若奥様の水晶のような咽喉のどへ、口からたらたらと血が流れて、元結もっといが、ぷつりと切れた。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
金紗きんしゃ元結もっといぐらいな長さの、金元結の柔らかい、よりのよい細いようなのを、二、三十本揃えたもの。芝居の傾城けいせいかつらにかけてあるのと同じ)だって、プツンとって、一ぺんかけただけだった。
空は同一おなじほど長方形に屋根を抜いてあるので、雨も雪も降込ふりこむし、水がたまつてれて居るのに、以前女髪結おんなかみゆいが住んで居て、取散とりちらかした元結もっといつたといふ
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
き油や鬢付びんつけの匂いだ。元結もっといを始終あつかっていることは、その指をみても知れる。善昌は三十二三だというのに、あの肉や肌の具合が、どうも四十以上の女らしい。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その関係から昔は江戸城の大奥で用いる紙や元結もっといや水引のたぐいは、この音羽の町でもっぱら作られたと云い伝えられ、明治以後までここらには紙屋や水引屋が多かった。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
口惜くやしい——とお稲ちゃんが言ったんですって。根揃ねぞろえ自慢でめたばかりの元結もっといが、プッツリ切れ、背中へ音がしてさっと乱れたから、髪結さんは尻餅をつきましたとさ。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょうどまちの場末に住んでる日傭取ひようとり、土方、人足、それから、三味線さみせんを弾いたり、太鼓をならしてあめを売ったりする者、越後獅子えちごじしやら、猿廻さるまわしやら、附木つけぎを売る者だの、唄を謡うものだの、元結もっといよりだの
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)