傷物きずもの)” の例文
「うむ、いずれみな、檻車かんしゃに乗せて、開封かいほう東京とうけいちょうへ差立て、皇帝からおめをいただくわけだが、しかしそれまでは、傷物きずものにしてはならん。大事にしておけよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男といふものは、うまやへ預ければ馬に蹴られるし、女部屋へ預ければ魂を抜き取られるし、女房かないの手に帰つて来る折には、十が八九傷物きずものになつてゐるものなのだから。
「千五百りょうでも、二千りょうでもうが、しいことにはけている。わたしは、もとから傷物きずものだいきらいなんだ。千りょうでも、じつはかんがえているんだ。」と、金持かねもちはいいました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「何しろ身分が身分なんだから、それは大したものに違ひなからうからな、一々けてしらべて見るなんて出來た譯のものではなからう。つまり偶然に、斯うした傷物きずものが俺に當つたといふ譯だ……」
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
「お、おくさん、こんなにきずがついてしまいました。傷物きずものになっては、主人しゅじんにいいつかったでは、どこへいったってれません。ど、どうかこのすいかをってください。」と、かおあかくして
初夏の不思議 (新字新仮名) / 小川未明(著)