側室そくしつ)” の例文
ましてや乙女、おゆうが、秀吉の眼にとまって、秀吉的な情炎の誘惑に、ついにてないでその側室そくしつとなったのもぜひがない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰れでもおしかさんは別者べつものにして、近衛様のお側室そくしつさま格に思い、やがて呼迎えられる日のあることを、遅かれ早かれ、約定済やくじょうずみのように傍の者も思っていたが
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
たまのようだといわれたその肌は、年増盛としまざかりの愈〻いよいよえて、わけてもお旗本の側室そくしつとなった身は、どこか昔と違う、お屋敷風の品さえそなわって、あたか菊之丞きくのじょう濡衣ぬれぎぬを見るような凄艶せいえんさがあふれていた。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ただ、単に、好むところの女を側室そくしつに入れ、代る代る、これをぎょするなんどという、そんな程度の秘戯ひぎが、いつまで、おもしろかるべき筈がない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊に、戦国の、しかも根本的に、弱いものを持って生れた女どもは、秀吉にとり、母でも、姉でも、妹でも、側室そくしつたちでも、一様にみな、不愍な者のかたまりであった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉の側室そくしつに、うら若い淀君よどぎみとかいう美女がかしずくようになって、閨門けいもんめぐる奥仕えの者たちから、いろいろな曲事ひがごとが聞えて来ても、その寛やかな彼女の胸に、小波さざなみも立てることはできなかった。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いうまでもなくこの女性は荒木村重の側室そくしつであった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)