)” の例文
が、これがもしスパイの余得であったなら同志を欺くためにもこういう不当所得のかされるような真似まねは決してなかったろう。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「フフンそんなに宜きゃア慈母おッかさんおなさいな。人が厭だというものを好々いいいいッて、可笑しな慈母さんだよ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
下司げす所為まねは決してなかった。何処どこの家の物でなければ喰えないなどと贅をいっていた代りには通人を気取ると同時に紳士を任じていた。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
熱気やっきとして自ら叱責しかッて、お勢のかおを視るまでは外出そとでなどをたく無いが、故意わざと意地悪く
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ただその頃の作家は自分の体験をありのままに書き周囲の人物をモデルとするような事は余りなかったから、『浮雲』のモデルや事実は先ずなかったろうと信ずる。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「慈母さんと云えば何をているんだろうネー」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
生残った戯作者の遺物どもは法燈再び赫灼として輝くを見ても古い戯作の頭ではどうようもなく、空しく伝統の圏内に彷徨して指をくわえて眼を白黒しろくろする外はなかった。
京伝もまた相当な見識を具えてひと癖もふた癖もあったが、根が町家生れで如才なく、馬琴と違っていも甘いも心得た通人だったから人をそらすような事は決してなかった。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
が、乙羽は三唖と違って如才ない利口者だったから、三唖のように紅葉の機嫌を損じるような事はなかったし、背後に資本家の博文館を背負っていたから紅葉の方でも遠慮していた。
陶庵とうあん侯招宴一条の如きは二葉亭の性質として応じないのは百も二百も承知していて少しも不思議と思っていないから、二葉亭の気質を能く理解のみこんでる私があらためて争うような事は決してない。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
かれこれ半年近くも何にもないで暮して、どうかこうか癒り掛けたあくる四十二年の二月十四日、ウラジーミル太公の葬儀を見送るべく、折からの降りしきる雪の中を行列筋の道端みちばたに立っていると
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)