仮綴かりとじ)” の例文
後には種々の製本が出来たが、最初に現われたのは半紙十枚ぐらいを一冊の仮綴かりとじにした活版本で、完結までには十冊以上を続刊したのであった。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
古い朱塗しゆぬりの机の上には室生犀星むろふさいせいの詩集が一冊、仮綴かりとじペエジを開いてゐる。「われ筆とることをしとなす」——これはこの詩人の歎きばかりではない。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
綾小路は椅背きはいに手を掛けたが、すぐに据わらずに、あたりを見廻して、テエブルの上にゆうべから開けたままになっている、厚い、仮綴かりとじの洋書に目を着けた。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「よかろう」研究班長の川波大尉は、実験方針書としるしてある仮綴かりとじの本を片手につかみあげた。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、ポケットから一冊の仮綴かりとじの本をとり出し、表紙を下にして、自分の前においた。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
仮綴かりとじの表紙を開けると、題に並べて、(大笹村、川裳明神かわすそみょうじん縁起。)としてあります。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは為事机に用いるものにて、紙、文反古ふみほご、書籍、その色々の小さなる道具を載せあり。その脇に書棚ありて、多くはあっさりしたる色の仮綴かりとじの本を並べあり。○この画室は町外まちはずれにあり。
ベーコンには気の毒なくらい薄っぺらな粗末な仮綴かりとじである。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
Charpentierシャルパンチエエ etエエ Fasquelleファスケル 版の仮綴かりとじの青表紙である。わしい手は、紙切小刀で切った、ざら附いた、出入りのあるペエジを翻した。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
寺尾はふところから汚ない仮綴かりとじの書物を出した。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)