人心ひとごゝろ)” の例文
慾深き人の心と降る雪は積るにつけて道をわするゝと云う、慾の世の中、慾の為には夫婦の間中あいなかも道を違えます人心ひとごゝろで、其の中にもまた強慾ごうよくと云うのがございます。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……もう、もう、そんな愚痴ぐちはやめ……星も出よ、あらしも吹けよ、唯ひとすぢに、あの人を思ふわが身には、どうでもよい。ある日マノンの歌ふには「うつろひやすい人心ひとごゝろ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
こゝろまるものもなく、にかゝる景色けしきにもおぼえぬは、れながらひど逆上のぼせ人心ひとごゝろのないのにと覺束おぼつかなく、くるひはせぬかとたちどまる途端とたん、おりき何處どこくとてかたひとあり。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
扨も窶れたるかな、はづかしや我を知れる人は斯かるすがたを何とか見けん——、そも斯くまで骨身をいためし哀れを思へば、深さは我ながら程知らず、是もが爲め、思へば無情つれな人心ひとごゝろかな。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)