五分月代ごぶさかやき)” の例文
一見剣客と思われる逞しい五分月代ごぶさかやきが、突如そこに姿を見せると、明らかに新手の助勢であることを示しながら、叱咜しったするように叫びました。
大兵肥満だいひやうひまんで、容貌の醜かつた津藤は、五分月代ごぶさかやきに銀鎖の懸守かけまもりと云ふ姿で、平素は好んでめくらじまの着物に白木しろきの三尺をしめてゐたと云ふ男である。
孤独地獄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
浅黄あさぎぼけのお仕着しきせ、青白い額をおお五分月代ごぶさかやき、彼は、自分の肩や胸の薄ぺッたさを感じながら、砂利を見つめた。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
背後うしろをのさのさとけて来て、阿爺どの。——呼声は朱鞘しゅざや大刀だんびら、黒羽二重、五分月代ごぶさかやきに似ているが、すでにのさのさである程なれば、そうした凄味すごみな仲蔵ではない。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五分月代ごぶさかやきを生やさせたり、黒の紋附を着流させたり、朝日映画子のいわゆる浅薄陳腐な嫌味ったらしい化け物が、これでもか、これでもかと、凄くもない目をむき出し
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
むろん、今の目まぜは、あっちの五分月代ごぶさかやきとこっちの青月代あおさかやきと、別人か同一人か、あっちにあの御家人がいたかどうか、それをたしかめに走らせた合い図なのでした。
例の五分月代ごぶさかやきも、相当に手入れが届いて、底知れず沈んでいること、死の面影おもかげのようにやつれていることは、以前に少しも変らないが、どこかにかがやかしい色が無いではない。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一緒に目を射た八人の者の姿! いずれも五分月代ごぶさかやきの伸び切った獰猛どうもうなる浪人者です。
五分月代ごぶさかやきの野郎が、馬方の蔭にはいって下にいたが、兄貴が見つけておれに捕れと言うから、この脇から十手を抜いて駈け出したら、その野郎は一散に浅間の方へ逃げおったから
五分月代ごぶさかやき唐桟とうざんの襟附の絆纏はんてんを引っかけて、ちょっと音羽屋おとわやの鼠小僧といったような気取り方で、多少の凄味をかせて、がんりきの百蔵が現われることを期待していると、意外にも
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)