二重瞼ふたえまぶち)” の例文
この女はその時眼を病んででもいたのだろう、こういいいい、綺麗きれい襦袢じゅばんそででしきりに薄赤くなった二重瞼ふたえまぶちこすっていた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しきりにまご/\して居る処へ、這入って来ました娘は、二十才はたちを一つも越したかと云う年頃、まだ元服前の大島田、色の白い鼻筋の通った二重瞼ふたえまぶちの、大柄ではございますが人柄の
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
法衣ころもを着た坊主が行列して向うを通るときに、黒い影が、無地の壁へ非常に大きく映る。——平岡は頬杖ほおづえを突いて、眼鏡の奥の二重瞼ふたえまぶちを赤くしながら聞いていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれどもその奥に口髭くちひげをだらしなく垂らした二重瞼ふたえまぶちやせぎすの森本の顔だけはねばり強く残っていた。彼はその顔を愛したいような、あなどりたいような、またあわれみたいような心持になった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小さいけれども明確はっきりした輪廓りんかくを具えている鼻、人並ひとなみより大きい二重瞼ふたえまぶちの眼、それから御沢おさわという優しい名、——私はただこれらを綜合そうごうして、その場合における姉の姿を想像するだけである。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分は老令嬢の態度が、いかにも、おごそかで、一種重要の気にちた形式を具えているのに、すくなからず驚かされた。K君は自分のむこうに立って、奇麗きれい二重瞼ふたえまぶちの尻にしわを寄せながら、微笑をらしていた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)