二抱ふたかか)” の例文
二抱ふたかかへもある赤松の、幹両股ふたまたになりたる処に、一匹の黒猿昇りゐて、左手ゆんでに黒木の弓を持ち、右手めてに青竹の矢を採りて、なほ二の矢をつがへんとせしが。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
ななめにうねった道角みちかどに、二抱ふたかかえもある大松おおまつの、そのしたをただ一人ひとり次第しだいえた夕月ゆうづきひかりびながら、野中のなかいた一ぽん白菊しらぎくのように、しずかにあゆみをはこんでるほのかな姿すがた
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
巨大な爬虫類はちゅうるいではないだろうか? 二抱ふたかかえほどもある老松が、土塀の前に背を延ばしていた。ワングリと盛り上がった幹の一所へ、焚火の光が届いていた。今にもウネウネ動き出しそうであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)