事故ことゆゑ)” の例文
戀しき時にお姿をかきても慰さめられまする事故ことゆゑといはれて、與之助あとは聞くことの出來ず、一人胸のうちに泣きける
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(前略)……もとより創業費とて不充分なりし事故ことゆゑ如何いかんとも進退出来ざるやうになり、昨年極末ごくまつつひに七百弗足らずの負債を背負ひ農業の方手を引き候。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
歌占ウタウラを告げる巫女の口に唱へられる歌であつて、此も神託とは言ひでふ、其所在の大寺の庇護を受けた社々にあつた事故ことゆゑ、やはり長篇の讃歌から単純化した今様と、足並みを揃へた曲節であつたらう。
持參し拂ひけるに越後屋にては甚だ心中しんちう不審ふしんに思ひけれ共是迄これまで間違もなき肥前屋小兵衞事故ことゆゑかれへ申も如何なりと此段このだんを奉行所へうつたへければ早速右の百三十兩を取上られて改めの上兩替町の島屋治兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
語りしに文藏も驚き外ならぬ事故ことゆゑ手代忠兵衞へ如何せんと相談なせば忠兵衞は打案じ此度お時樣爰へ來りたまひ今すぐ親公おやごの病氣なりとて行給はゞ世間の聞えも惡し是は御夫婦連にて身延みのぶ參詣さんけいとて御出のかたよろしからんと申にぞ其段母へも咄しければ母は大の堅法華かたほつけの事なる故もつともの事なりとてゆるせしに付お時は大に喜び早々さう/\其用意を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)