久闊きゅうかつ)” の例文
瀬川は一わたり久闊きゅうかつの挨拶がすんでから、急に話頭を転換して言った。私には浅野という男が誰のことかとみには思い出せなかったので
犠牲者 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
これは私があの新橋しんばし停車場でわざわざ迎えに出た彼と久闊きゅうかつの手を握り合った時、すでに私には気がついていた事でした。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と、登って来た二頭の荷駄を迎えて、ただならぬ親しみで久闊きゅうかつの情をべたり、無事を歓び合ったりしているのであった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて住職奥田墨汁おくだぼくじゅう師をとぶらって久闊きゅうかつじょした。対談の間に、わたくしが嶺松寺と池田氏の墓との事を語ると、墨汁師は意外にもふたつながらこれを知っていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いつもただ首を上げてチョット顔をみるだけで、それが久闊きゅうかつの挨拶であり、別離の辞である。空虚な人間の挨拶などは、喋る気がしなくなっているのであった。
青春論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
なにもしていない、お茶を呑んで久闊きゅうかつじょしていたところだったと答えると、その風呂敷包を拡げてみろと云った。私はこの時はじめてハハアと合点が入った。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
袁傪は恐怖を忘れ、馬から下りて叢に近づき、なつかしげに久闊きゅうかつを叙した。そして、何故なぜ叢から出て来ないのかと問うた。李徴の声が答えて言う。自分は今や異類の身となっている。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
二葉亭は『浮雲』以後全く韜晦とうかいしてこの文壇の気運を白眼冷視し、一時莫逆ばくげきを結んだ逍遥とも音信を絶していたが、丁度その頃より少し以前、逍遥と二葉亭とは偶然私の家で邂逅かいこうして久闊きゅうかつを叙し
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
久闊きゅうかつじょし、いろいろ話の中に、牧氏のいうには
一そ自分もあすこへ行って、先生と久闊きゅうかつを叙し合おうか。が、多分先生は、たった一学期の短い間、教室だけで顔を合せた自分なぞを覚えていまい。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
本来、久闊きゅうかつの情もぶべきなれど、主君玄徳の命をうけて、今日、これにて丞相を待ちうけたる関羽は、私の関羽にあらず。——聞く、英雄の死は天地もくと。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その夜も一しょだった村田君は、私を彼に紹介しながら、この利巧そうな女形と、互に久闊きゅうかつを叙し合ったりした。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
孫立そんりゅうの一行は、まもなく郭門かくもんでみな馬をおりて、これへ来た。相見るや、欒廷玉らんていぎょくもオオと双手で迎え、孫立もまた手をさしのべ、かたく握り合って、お互い久闊きゅうかつの情を見せた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊に今の洋服を着た菊五郎などは、余りよく私の友だちに似ているので、あの似顔絵にがおえの前に立った時は、ほとんど久闊きゅうかつじょしたいくらい、半ば気味の悪い懐しささえ感じました。どうです。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なんと、あいにく浮かない日ではあったが、さっそく通して、久闊きゅうかつをあたため、さて何用でと来意を訊くと、客の湯隆は、旅包みの中から、二タ竿の黄金、おもさ二十両を、そこへさし出して。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあ、久闊きゅうかつは、酒から」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、まず久闊きゅうかつじょう
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)