不意気ぶいき)” の例文
旧字:不意氣
ね、太夫、わたしには、まだそなたのこころが、しっくりと判らない気がしてなりません。引く手あまたの人気役者が、こんな不意気ぶいきな女なぞを
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
蘭堂という筆名ははなは不意気ぶいきだけれど、彼はまだ三十歳の青年作家で、作家仲間でも評判の美丈夫びじょうぶであったから、この種の誘惑には度々たびたび出会っている仕合者しあわせものだ。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたくし不意気ぶいきものでございますから、貴方あなたに嫌われるのは当前あたりまえでございますが、たとえ十年でも二十年でも亭主はもつまい、女房にょうぼはもたないと云いかわせましたから
何か、聞きゃ、河野の方で、妙の身体からだ探捜さぐりを入れるのが、不都合だとか、不意気ぶいきだとか言うそうだが
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それに反して野暮は同義語として、否定的に言表された不意気ぶいき不粋ぶすいとを有する。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
古ズボンに古下駄をはき、それに古手拭をさがし出して鉢巻の巻方も至極不意気ぶいきにすれば、南は砂町、北は千住から葛西金町辺かさいかなまちあたりまで行こうとも、道行く人から振返って顔を見られる気遣いはない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
利かして、寝酒の一杯も、差し入れてくれそうなものだと思っていたのだよ——がらこそ不意気ぶいきだが、どこかこうおつなところのあるお人なんだから——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
傳「どうも驚いた、熊笹も鮓屋すしやにあると随分いきなもんだが、此様こんなにあっちゃア不意気ぶいきなもんだのう」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ただ別れるの。……不意気ぶいきだねえ、——一石橋の朧夜おぼろよに、」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところが、世の中のめぐり合せという奴は不思議なもので、思いがけなく、とんだ不意気ぶいきで、不粋ぶすいなことを、おまはんに聴かせなけりゃあならねえ羽目になった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
めえさんなんぞより余程よっぽど…ナニおまえさまとはちげえ、屋敷もんだから不意気ぶいきだが、なか/\い女だよ
あ「屋敷者だもの、だから不意気ぶいきだよ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)