三更さんこう)” の例文
前の夜、春長軒父子は、信忠などとともにおそくまで信長の前に語らい、官邸に帰って眠ったのはかれこれ三更さんこうに近かった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
様々なうわさが人々の口から口へと伝わる。毎夜三更さんこうを過ぎるころ、紀昌の家の屋上おくじょうで何者の立てるとも知れぬ弓弦の音がする。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その三更さんこうに近づいた頃、オルガンティノは失心の底から、やっと意識を恢復した。彼の耳には神々の声が、未だに鳴り響いているようだった。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その夜も三更さんこう(午後十一時—午前一時)に及ぶころおいに、孟もさすがに疲れてうとうとと眠ったかと思うと、唯ならぬ物音にたちまち驚き醒めた。
十五日の夜も三更さんこう(真夜中の十二時から二時間)を過ぎて、人影もようやくまれになったころ、髪を両輪に結んだ召使ふうの小女こおんなが双頭の牡丹燈ぼたんとうをかかげてさきに立ち、ひとりの女を案内して来た。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
夜は既に三更さんこうに近かった。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
深夜三更さんこうの鐘が鳴った。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夜も三更さんこう(午後十一時—午前一時)に至る時、扉をたたいて進み入ったのは、白いひげを垂れて紅いかんむりをかぶった老人で、朱鑠を仰いでうやうやしく一揖いちゆうした。
所が三更さんこうも過ぎた時分、突然茶室のそとの庭に、何か人の組み合うらしい物音が聞えるではございませんか? わたしの心にひらめいたのは、勿論もちろん甚内の身の上でございます。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
西山荘の門は閉じられ、三更さんこう四更しこう、雲もしずかに、山の尾根や山ふところに深く臥した。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三更さんこうの後に次の駅にゆき着くと、駅の役人が迎いに出て来て、ひどく驚いたように言った。
三更さんこうか」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これには何か子細があるに相違ないと思ったので、その晩は寝た振りをして窺っていると、夜も三更さんこう(午後十一時—午前一時)とおぼしき頃に、たちまち大きい声で呼ぶ者がある。
十五日の夜も三更さんこう(午後十一時—午前一時)を過ぎて、往来の人影も次第に稀になった頃、髪を両輪りょうわに結んだ召仕い風の小女が双頭の牡丹燈をかかげて先に立ち、ひとりの女を案内して来ました。
そこで、九月三日の夜二人の勇者に命じて、武器をたずさえて窺わせると、宵のあいだは何事もなかったが、夜も三更さんこうに至る頃、一匹の黒い虎が寺内へり来たって、一人の道士をくわえて出た。