一杵いつしよ)” の例文
引き窓の綱、流し元の水瓶みづがめ、——そんな物も一つづつ見えなくなつた。と思ふと上野の鐘が、一杵いつしよづつ雨雲にこもりながら、重苦しい音を拡げ始めた。
お富の貞操 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うみみどりさけなるかな。後苑こうゑん牡丹花ぼたんくわ赫耀かくえうとしてしかしづかなるに、たゞひとめぐはち羽音はおとよ、一杵いつしよ二杵にしよブン/\と、ちひさき黄金きんかねる。うたがふらくは、これ、龍宮りうぐうまさときか。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)