一昨々日さきおととい)” の例文
肩から胸まで切り下げられ、そのままおくなりなされたし、一昨々日さきおととい些細ささいとがで、お納戸役なんどやくの金吾様が命をお取られなされました
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ところで、お前に少し訊きたいことがあるんだが、一昨日おととい一昨々日さきおととい頃、この店へ筆を取り換えに来た人はなかったかえ。この水筆すいひつだ」
半七捕物帳:22 筆屋の娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それにしても一昨々日さきおとといの晩、母親と立ち話をして別れた時にも、自分はどこまでも人情ずくで、真実母子おやこ二人の者の身を哀れに思ったのであった。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「今日から三日前、つまり一昨々日さきおとといですね。絹川さんの所へ男のお客さんはなかったですか、丁度わたし位の年配の」
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
取引所の事情を知り抜いている話ぶりなので……そうして内々で準備をしていると一昨々日さきおととい……十一日の朝になって岩形氏がひょっこり遣って来て
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「なぜって、亡くなってしまったんですよ。一昨々日さきおとといとむらいも済みましたそうで。」と、答えるほかはなかった。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「いやほんとうだってば。まあ聞かっせえ、しまいまで。じゃ言おう。お前さん、一昨々日さきおとといの晩、柳美館とやらで、『一休禅師』と『小夜衣』と読みなすったろう」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
(その梅岡さんに頼んで、いつの幾日いくか——今日だ。)と愛の野郎がいいました。すなわち一昨々日さきおととい
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云ったきり後を云わないので、一昨々日さきおとといの朝の陣場夫人の来訪の趣意を話して聞かせて
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一昨々日さきおとといのことだったがね、なまの魚が食べたいから釣って来いと命令いいつけられたのだよ。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一昨々日さきおとといあたりから、ちょっと宿下やどさがりをいたしておりますが」という返事であった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
「ですから、今の処、とても私一人の腕で三人はやりきれない! 小石川の方へも左迄は請求たのまれないもんですから、お梅だけは奉公に出すことにして、丁度一昨々日さきおととい先方むこうへ行きましたの。」
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
一昨日おととい一昨々日さきおとといの晩です」と云う。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一昨々日さきおとといからこうして隠まって置いてやると、そりゃあ丸で嘘の皮で、市ヶ谷の女と心中しそこなったんだということを今初めて聞いた。
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして爾来じらい墓所の工事に専念いたし、一昨々日さきおとといをもって完全なる葬送を終りました。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
先生、私なども、まことと思わん、どうしても夢でがすよ、それが一昨々日さきおとといの晩だ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下痢が始まったのは発病してから二十四時間後の一昨々日さきおとといの夜であった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)