㷀然けいぜん)” の例文
……そのあとへ、人魂ひとだまが一つ離れたように、提灯の松の下、小按摩の妄念は、列の中へ加わらずに孤影㷀然けいぜんとして残っている。……
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
疲れてもやめえぬ戦いを持続しながら、㷀然けいぜんとしてひとりその間に老ゆるものは、見惨みじめと評するよりほかに評しようがない。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
見よ或はかの棄てられし恨をのこし、或はこの奪はれしかなしみひ、前の恨の消えざるに又新なる悲を添ふ。棄つる者は去り、棄てざる者はき、㷀然けいぜんとして吾独われひとり在り。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
土瓶どびんれたみづつて墓參はかまゐりにつて、それから膳椀ぜんわんみなかへして近所きんじよ人々ひと/″\かへつたのち勘次かんじ㷀然けいぜんとしてふるつくゑうへかれた白木しらき位牌ゐはいたいしてたまらなくさびしいあはれつぽい心持こゝろもちになつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)