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にんぎょうや
不思議にも、その
小さな
店は、
人形屋でありました。
奥のたなの
上に、いくつも
同じような
人形が
並べてありました。
「だって、
人形屋のおじいさんが、こちらは、しあわせで、こちらは、
不しあわせだといったのですもの。」
それから、まもない、ある
日のことでした。
酔っぱらいの
紳士が、
人形屋の
店さきへはいってきて、いろいろの
人形を
出させて
見ていましたが、どれも
気にいりませんでした。
外国人が、
人形屋へはいって、三つ
並んでいた
人形を、一つ、一つ
手にとってながめていました。どれも、
同じ
人形師の
手で
作られた、
魂のはいっている
美しい
女の
人形でした。
娘は、ある
日、その
町の
中を
歩いていました。いつかの
人形屋にゆこうと
思っていました。
晩方の
夢のようにかすんだ
空の
下を、
紫色の
光のさす
店を
探しながら
見覚えのある
路次に
入ってゆきました。