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どぶばた
黒塀の、
溝端の
茣蓙へ、
然も
疲れたやうに、ほつと、くの
字に
膝をついて、
婦連がいたはつて
汲んで
出した、ぬるま
湯で、
輕く
胸をさすつた。その
婦の
風情は
媚かしい。
漸と
一どんぶり、それでも
我慢に
平げて、「うれしい、お
見事。」と
賞められたが、
歸途に
路が
暗く
成つて、
溝端へ
出るが
否や、げツといつて、
現實立所に
暴露におよんだ。
老耄儒者めが、
家に
引込んで、
溝端へ、
桐の
苗でも植ゑ、孫娘の嫁入道具の算段なりとして
居れば済むものを——いや、
何時の世にも当代におもねるものは、当代の学者だな。