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しやかう
斯ういふ
風に、
夫から
夫へと
客を
飽かせない
樣に
引張つて
行くのが、
社交になれた
主人の
平生の
調子であつた。
「それぢや
行かう」と
云つて
宗助は
出掛けた。
宗助は
一般の
社交を
嫌つてゐた。
已を
得なければ
會合の
席などへ
顏を
出す
男でなかつた。
個人としての
朋友も
多くは
求めなかつた。
『横笛、横笛』、件の武士は幾度か
獨語ちながら、
徐に元來し方に歸り行きぬ。霞の底に響く
法性寺の鐘の聲、
初更を告ぐる頃にやあらん。