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くびくくり
翌朝私が眼を
覚すと、例の小僧が
家へ
馳込んで来て、また
河岸のあの
柏へ
首縊がある
腫物が出来ても針をすることは
先ず見合せたいと
云い、
一寸とした怪我でも血が出ると
顔色が青くなる。毎度都会の地にある
行倒、
首縊、変死人などは何としても見ることが出来ない。
「凶事がある
前兆じゃよ、
昨夜は夢見が悪かった。早速
護摩でも
焚かせねばお邸から
縊死を出してどうするものじゃ。」と
令夫人は大きに担ぐ。
縊死が楽だというけれどというので、いやですわ、
洟を出すのがあるといいますもの、水へはいるのが
形骸を残さないで
一番好いと思うと言いますと、そうかしら、薬を
服むのは苦しいそうだね。
「
貴下はお邸の方かな。松の木に
縊死があるで。」と巡査に
謂われてまた驚き、
婆々の死骸を見て三度
吃驚「やれ首を
縊った、松の木が。」と
慌しく触込んだり。