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かうざ
二人は
小聲で
話しながら、
大きな
部屋にぎつしり
詰つた
人の
頭を
見回した。
其頭のうちで、
高座に
近い
前の
方は、
烟草の
烟で
霞んでゐる
樣にぼんやり
見えた。
彼は
高座の
方を
正視して、
熱心に
淨瑠璃を
聞かうと
力めた。けれどもいくら
力めても
面白くならなかつた。
時々眼を
外らして、
御米の
顏を
偸み
見た。
見るたびに
御米の
視線は
正しい
所を
向いてゐた。