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うまう
後の山の竹藪を遠くから見ると、暗い杉や
檜の前に、
房々した緑が浮き上つて居る。まるで鳥の
羽毛のやうになり。頭の中で
拵へた
幽篁とか
何とか云ふ気はしない。
その後に、二臺の
幌をはねた馬車が續いてゐた。ひら/\と飜る
面紗や搖れ動く帽子の
羽毛などがその乘物に一杯だつた。
騎手の中二人は若い元氣のよさゝうな紳士だつた。
就中、ねうちものは、
毛卷におしどりの
羽毛を
加工するが、
河蝉の
羽は、
職人のもつとも
欲するところ、
特に、あの
胸毛の
火の
燃ゆる
緋は、
魔の
如く
魚を
寄せる、といつて
價を
選ばないさうである。
彼等の
動作の輕快さと陽氣さが白い
羽毛の鳥の群を思ひ出させた。