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あわてふためき
窠宿の方へ走り
往ば、狐はかくと
見よりも、
周章狼狽逃げ行くを、なほ
逃さじと
追駆けて、表門を
出んとする時、一声
嗡と
哮りつつ、
横間より
飛で掛るものあり。
喰はゞ
皿までと腰なる一刀拔くより早く
聲立させじと五郎藏が口の中へ
突貫し二ツ三ツ
刺りしかば五郎藏は七轉八倒なすのみにて
其儘息は
絶果たり
頓て久兵衞は一刀を
鞘に納め
周章狼狽五郎藏の
死骸を
斯りし程に下女は
慌狼狽近所の人々に聞ども
誰知る者もなく
早速米屋へも知らせければ市郎左衞門は云に及ばず我も/\と
駈付朱に
染たる死骸を見て
皆々茫然として言葉もなかりしが市郎左衞門
涙を