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あけたて
元来下宿屋に建てた
家だから、建前は粗末なもので、
動もすると障子が
乾反って
開閉に困難するような
安普請ではあったが、
形の如く床の間もあって
始めての
所爲か、
襖の
開閉の
度に
出る
顏が
悉く
違つてゐて、
子供の
數が
何人あるか
分らない
樣に
思はれた。
見て太田樣の陸尺共が
聲々に此土百姓の
大馬鹿者め戸の
明建も知らぬか知らすば
教て遣ふ
稽古に來いと
散々に惡口致候ゆゑ嘉川樣の事に付此多兵衞めも
堪へ
兼て
進寄つひ
一言二言々爭ひし中双方
錆刀を