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抜
>
ぬ
ふりがな文庫
“
抜
(
ぬ
)” の例文
旧字:
拔
越前一の強力といわれる氏長が力をこめて
抜
(
ぬ
)
こうとしても抜けないのである。氏長は、おめおめとこの女について行く外はなかった。
大力物語
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「ねえ、おかよや、おまえ、この
子守唄
(
こもりうた
)
をきいたことがあって?」といって、
箱
(
はこ
)
の
中
(
なか
)
から一
枚
(
まい
)
のレコードを
抜
(
ぬ
)
いて、
盤
(
ばん
)
にかけながら
谷にうたう女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ろうをぬったひげだるまの目は、むこうの
隅
(
すみ
)
でぴかぴか光っているし、すさのおのみことは刀を
抜
(
ぬ
)
いて八頭の
大蛇
(
だいじゃ
)
を切っていました。
清造と沼
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
「風のない時はたての棒、風の強い時は横の棒、その他はみみずなどの形。あまり煙の少ない時はコルク
抜
(
ぬ
)
きのようにもなります。」
ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
為朝
(
ためとも
)
は
筋
(
すじ
)
を
抜
(
ぬ
)
かれて
弓
(
ゆみ
)
は
少
(
すこ
)
し
弱
(
よわ
)
くなりましたが、ひじがのびたので、
前
(
まえ
)
よりもかえって
長
(
なが
)
い
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
ることができるようになりました。
鎮西八郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
▼ もっと見る
さて、
聞
(
き
)
かつしやい、
私
(
わし
)
はそれから
檜
(
ひのき
)
の
裏
(
うら
)
を
抜
(
ぬ
)
けた、
岩
(
いは
)
の
下
(
した
)
から
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
へ
出
(
で
)
た、
樹
(
き
)
の
中
(
なか
)
を
潜
(
くゞ
)
つて
草深
(
くさふか
)
い
径
(
こみち
)
を
何処
(
どこ
)
までも、
何処
(
どこ
)
までも。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ぼくは
一瞬
(
いっしゅん
)
、
度胆
(
どぎも
)
を
抜
(
ぬ
)
かれましたが、こんな景色とて、これが、あの背広を失った晩に見たらどんなにつまらなく見えたでしょうか。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
又ある時は、自分の
父
(
ちゝ
)
から御談義を聞いてゐる最中に、何の気もなく
父
(
ちゝ
)
の顔を見たら、急に吹き
出
(
だ
)
したくなつて弱り
抜
(
ぬ
)
いた事がある。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
寄
(
よ
)
れば
触
(
さは
)
れば
高慢
(
かうまん
)
の
舌
(
した
)
爛
(
たゞら
)
してヤレ
沙翁
(
シヱークスピーヤ
)
は
造化
(
ざうくわ
)
の
一人子
(
ひとりご
)
であると
胴羅魔声
(
どらまごゑ
)
を
振染
(
ふりしぼ
)
り
西鶴
(
さいくわく
)
は
九皐
(
きうかう
)
に
鳶
(
とんび
)
トロヽを
舞
(
ま
)
ふと
飛
(
と
)
ンだ
通
(
つう
)
を
抜
(
ぬ
)
かし
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
鬢盥
(
びんだらい
)
に、濡れ手拭を持ち添えたいろは茶屋のお品は、思いきりの
抜
(
ぬ
)
き
衣紋
(
えもん
)
にも、まだ
触
(
さわ
)
りそうな
髱
(
たぼ
)
を気にして、お米の側へ腰をかける。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし
奇妙
(
きみょう
)
なことには、重吉は目から鼻へ
抜
(
ぬ
)
けるほどの
利口者
(
りこうもの
)
でしたが、六兵衛は
反対
(
はんたい
)
に何をやらせても、のろまで
馬鹿
(
ばか
)
でした。
とんまの六兵衛
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
切られた者の話によると、足音も立てずに忍び寄って、恐ろしい手際で
抜
(
ぬ
)
き
討
(
うち
)
に髷節を払い、サッと風の如く飛去るらしいというのです。
銭形平次捕物控:174 髷切り
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私
(
わたくし
)
の
祖父
(
じじ
)
の
年齢
(
とし
)
でございますか——たしか
祖父
(
じじ
)
は七十
余
(
あま
)
りで
歿
(
なくな
)
りました。
白哲
(
いろじろ
)
で
細面
(
ほそおもて
)
の、
小柄
(
こがら
)
の
老人
(
ろうじん
)
で、
歯
(
は
)
は一
本
(
ぽん
)
なしに
抜
(
ぬ
)
けて
居
(
い
)
ました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「
地震
(
じしん
)
や」「地震や」同時に声が出て、蝶子は襖に
掴
(
つか
)
まったことは掴まったが、いきなり腰を
抜
(
ぬ
)
かし、キャッと叫んで
坐
(
すわ
)
り込んでしまった。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「おとぼけなすっちゃいけません。
闇
(
やみ
)
の
夜
(
よ
)
のない
女護
(
にょご
)
ヶ
島
(
しま
)
、ここから
根岸
(
ねぎし
)
を
抜
(
ぬ
)
けさえすりゃァ、
眼
(
め
)
をつぶっても
往
(
い
)
けやさァね」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「さあ、今だ、うて」とお歌いになると、たちまち一度に太刀を
抜
(
ぬ
)
き放って、
建
(
たける
)
どもをひとり残さず切り殺してしまいました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
アンネ・リスベットは、朝早くから、ずっとここにいたのです。からだの力は、もう、ほとんど
抜
(
ぬ
)
けきっているようでした。
アンネ・リスベット
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
夏はさ中にも近づいたが山の
傾斜
(
けいしゃ
)
にさしかかって建て連らねられたF——町は南の山から風が北海に
吹
(
ふ
)
き
抜
(
ぬ
)
けるので熱気の割合に涼しかった。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「なんだって君は、脳みそを半分
抜
(
ぬ
)
き取られた
兎
(
うさぎ
)
みたいな顔をしているのですね?」と、出会いがしらにルーシンが言った。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
侠者子路はまずこの点で
度胆
(
どぎも
)
を
抜
(
ぬ
)
かれた。
放蕩無頼
(
ほうとうぶらい
)
の生活にも経験があるのではないかと思われる位、あらゆる人間への
鋭
(
するど
)
い心理的
洞察
(
どうさつ
)
がある。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
抜
(
ぬ
)
き替えたこの一銭銅貨がみんな五拾銭銀貨であったならば、拾円以上にもなっているであろう——私は
笊
(
ざる
)
を持つと、暗がりの多い町へ出て行った。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
公園
生
(
は
)
え
抜
(
ぬ
)
きのチンピラ共の外は、
大抵
(
たいてい
)
帰って了い、お客様も二三人来たかと思うと、あとが
途絶
(
とだ
)
える様になった。
木馬は廻る
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
僕は静かに椅子から身を起すと
抜
(
ぬ
)
き足
差
(
さ
)
し足で、その梯子のある階段のうしろへ廻った。がそのとき階段のうしろで、意外なことを発見してしまった。
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
灰
(
あく
)
の
抜
(
ぬ
)
けた恋慕流しの
咽喉
(
のど
)
から察するに、相当その道に苦労して、女という女を見事征服してきたに相違ない——。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それを見て取った大衆文芸家は、宜敷いというので肌を
抜
(
ぬ
)
ぎ——鉢巻ぐらいはしたでしょう、続々名作を出したんですよ。そこで盛んになったんですよ。
大衆文芸問答
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
金魚鉢
(
きんぎょばち
)
は、ぐるりに、
白
(
しろ
)
い
砂
(
すな
)
をしきつめてある。
砂
(
すな
)
をはらいのけると、
埋
(
う
)
めたと
見
(
み
)
せた
鉢
(
はち
)
が、すぽりと
土
(
つち
)
から
抜
(
ぬ
)
きとれるようになつているのがわかつた。
金魚は死んでいた
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
色の白い
愛嬌
(
あいきょう
)
のある
円顔
(
まるがお
)
、髪を
太輪
(
ふとわ
)
の
銀杏
(
いちょう
)
返しに結って、伊勢崎の襟のかかった着物に、
黒繻子
(
くろじゅす
)
と変り八反の昼夜帯、
米琉
(
よねりゅう
)
の羽織を少し
抜
(
ぬ
)
き
衣紋
(
えもん
)
に
被
(
はお
)
っている。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
私の与えた
巻煙草
(
まきたばこ
)
を彼は耳にはさんだきり、それを吸おうとはせずに、自分の腰から
鉈豆
(
なたまめ
)
の
煙管
(
きせる
)
を
抜
(
ぬ
)
いた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
袖屏風の陰で抜毛のついた櫛を握ってヨロヨロと立ちあがる
抜
(
ぬ
)
け
上
(
あが
)
った「お岩」の凄い顔を思い出す。
秋毛
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
もぐさや
松脂
(
まつやに
)
の火打ち石や、それから
栓
(
せん
)
抜
(
ぬ
)
きのねじや何に使ったかわからぬ小さな鈴などがだらしもなく雑居している光景が実にありありと眼前に思い浮かべられる。
藤棚の陰から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「
申
(
もう
)
し。お寒うはござりませぬか」笛を置いた若衆の左の手が、
仰向
(
あおむ
)
けになっている甘利の左の胸を軽く
押
(
おさ
)
えた。ちょうど
浅葱色
(
あさぎいろ
)
の
袷
(
あわせ
)
に
紋
(
もん
)
の染め
抜
(
ぬ
)
いてある辺である。
佐橋甚五郎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
この段取の間、男は
背後
(
うしろ
)
の
戸棚
(
とだな
)
に
凴
(
よ
)
りながらぽかりぽかり
煙草
(
たばこ
)
をふかしながら、
腮
(
あご
)
のあたりの
飛毛
(
とびげ
)
を人さし指の先へちょと
灰
(
はい
)
をつけては、いたずら半分に
抜
(
ぬ
)
いている。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
為めに頭を
冷
(
ひ
)
やさんとするも
悲
(
かなし
)
いかな水なきを如何せん、鹽原君
帯
(
お
)
ぶる所の劔を
抜
(
ぬ
)
きて其顔面に
当
(
あ
)
て、以て多少之を
冷
(
ひや
)
すを
得
(
え
)
たり、朝に
至
(
いた
)
りて
少
(
すこ
)
しく快方に
向
(
むか
)
ひ来る。
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
だって、もしそうでなかったら、
錠
(
じょう
)
まで手がとどかないのですから、戸を開けることができなかったでしょう。ともかくこうして、らくに
抜
(
ぬ
)
けでることができました。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
何
(
ど
)
うしたんだ……どう/\……ハハア
解
(
わか
)
つた
今
(
いま
)
食
(
く
)
つた
餅
(
もち
)
が、
大仏餅
(
だいぶつもち
)
だから、
目
(
め
)
から鼻へ
抜
(
ぬ
)
けたのだ。
大仏餅。袴着の祝。新まへの盲目乞食
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
薄く切ってバターを塗りながら
鉄網
(
かなあみ
)
で焼いてもよし、中を
括
(
く
)
り
抜
(
ぬ
)
いて肉類や魚類の細かくしたものを野菜の細かく切ったものと混ぜて中へ詰めてまたよく煮てもよし
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
一体に朝が農村よりはずっとおそいので、仕事に取りかかって程もなく、やっと身がはいる頃にもう十二時になる。そこでまた一時間ばかりも、
息
(
いき
)
を
抜
(
ぬ
)
くのが何だか惜しい。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼女が小柄だったことは前に書いたが体は
着痩
(
きや
)
せのする方で
裸体
(
らたい
)
の時は肉づきが思いの
外
(
ほか
)
豊かに色が
抜
(
ぬ
)
けるほど白く幾つになっても
肌
(
はだ
)
に若々しいつやがあった平素魚鳥の料理を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一休
(
いっきゅう
)
さんは、
幼時
(
ようじ
)
から、
目
(
め
)
から
鼻
(
はな
)
に
抜
(
ぬ
)
けるような、りこうな
子供
(
こども
)
でしたが、そのりこうさが、
仏門
(
ぶつもん
)
に
入
(
はい
)
ってみがきをかけられ、
後世
(
こうせい
)
にのこるような
英僧
(
えいそう
)
にとなったわけでしょう。
先生と父兄の皆さまへ
(新字新仮名)
/
五十公野清一
(著)
左に
抜
(
ぬ
)
き
書
(
が
)
きしたのは、かれがいよいよ朝倉先生夫妻とともに
空林庵
(
くうりんあん
)
を引きあげることになった前日あたりに書かれたものらしいが、そのころの、明るいとも暗いともつかない
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
西蔵
(
チベット
)
は
世界
(
せかい
)
の
屋根
(
やね
)
といはれてゐるほどで、
国
(
くに
)
全体
(
ぜんたい
)
が
高
(
たか
)
い
山々
(
やまやま
)
の
連
(
つらな
)
りだ。その
山々
(
やまやま
)
の
中
(
なか
)
でも
群
(
ぐん
)
を
抜
(
ぬ
)
いて
高
(
たか
)
く、
西蔵
(
チベット
)
の
屋根
(
やね
)
ともいはれるのが、
印度
(
インド
)
との
国境
(
こくきやう
)
に
跨
(
またが
)
るヱヴェレスト
山
(
ざん
)
である。
火を喰つた鴉
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
植木屋が
筍
(
たけのこ
)
を
抜
(
ぬ
)
いたといって怒られ、はては『おババさま』の姑でさえが、
枯
(
か
)
れた朝顔をぬいたというので『おババさま好き人です。しかし朝顔に気の毒しました』と
叱言
(
こごと
)
を言われた。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
然
(
しか
)
しわれは
人
(
ひと
)
を
傷
(
きずつ
)
け
害
(
そこな
)
ふ
党
(
やから
)
とは
違
(
ちが
)
ふ。
幼児
(
をさなご
)
の
眼
(
め
)
を
剞
(
く
)
り
抜
(
ぬ
)
き、
足
(
あし
)
を
断
(
た
)
ち、
手
(
て
)
を
縛
(
しば
)
つて、これを
曝物
(
さらしもの
)
に、
憐愍
(
あはれみ
)
を
乞
(
こ
)
ふ
悪人
(
あくにん
)
どもが
世間
(
せけん
)
にある。さればこそ
今
(
いま
)
この
幼児等
(
えうじら
)
を
観
(
み
)
て、
心配
(
しんぱい
)
いたすのだ。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
私も
抜
(
ぬ
)
からず大酒をくらって、とにもかくにも地べたに寝て見せましたので、仲間からもほめられ、それがためにお金につまって質屋がよいが
頻繁
(
ひんぱん
)
になりまして、印刷所のおかみさんと
男女同権
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
と
思
(
おも
)
い、
夜
(
よ
)
にまぎれて、
塀
(
へい
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて、
魔法
(
まほう
)
つかいの
庭
(
にわ
)
へ
入
(
はい
)
り、
大急
(
おおいそ
)
ぎで、
菜
(
な
)
を一つかみ
抜
(
ぬ
)
いて
来
(
き
)
て、おかみさんに
渡
(
わた
)
すと、おかみさんはそれでサラダをこしらえて、
旨
(
うま
)
そうに
食
(
た
)
べました。
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
「お千代、今日からおれは内職を始めるよ。毎日歩き廻っても、靴の
踵
(
かかと
)
がへるばっかりで、どうにもならないから、
諦
(
あきら
)
めてこれから内職だ。」と洋服の上着だけ
抜
(
ぬ
)
いで、重吉は机へ背をよせ
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ずらっとならべた薬種びんの下の調剤卓の前に、もたれのない
抉
(
く
)
り
抜
(
ぬ
)
きの
事務椅子
(
じむいす
)
に腰かけて、黒い事務マントを羽織った
悒鬱
(
ゆううつ
)
そうな小柄な若い男が、一心に小形の書物に読みふけっている。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そうして首筋の濃粧は主として
抜
(
ぬ
)
き
衣紋
(
えもん
)
の媚態を強調するためであった。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
さなきだに
彼
(
かれ
)
の
憔悴
(
しょうすい
)
した
顔
(
かお
)
は
不幸
(
ふこう
)
なる
内心
(
ないしん
)
の
煩悶
(
はんもん
)
と、
長日月
(
ちょうじつげつ
)
の
恐怖
(
きょうふ
)
とにて、
苛責
(
さいな
)
まれ
抜
(
ぬ
)
いた
心
(
こころ
)
を、
鏡
(
かがみ
)
に
写
(
うつ
)
したように
現
(
あら
)
わしているのに。その
広
(
ひろ
)
い
骨張
(
ほねば
)
った
顔
(
かお
)
の
動
(
うご
)
きは、
如何
(
いか
)
にも
変
(
へん
)
で
病的
(
びょうてき
)
であって。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
すこしの
窪
(
くぼ
)
みのない、何物もまじらない青みのある土だけが、自然の胸のようにのびのびと
横
(
よこた
)
わっている、それが見たいのだ、ほんの少しの傷にも土をあてがって
埋
(
う
)
め、小砂利や、ささくれを
抜
(
ぬ
)
いて
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
抜
常用漢字
中学
部首:⼿
7画
“抜”を含む語句
引抜
抜刀
選抜
抜萃
出抜
拍子抜
抜出
居合抜
素破抜
通抜
抜手
図抜
切抜
切抜帳
垢抜
抜擢
腑抜
間抜
藻抜
釘抜
...