はづか)” の例文
ぐるツと取卷とりまかれてはづかしいので、アタフタし、したいくらゐ急足いそぎあし踏出ふみだすと、おもいものいたうへに、落着おちつかないからなりふりをうしなつた。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それは處女作しよぢよさくふにもはづかしいやうな小さな作品ではあつたが、二十日近くのひた向きな苦心努力にすつかり疲れきつてゐた私は、その刹那せつな
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
二三日前のふと考へて面白がつた酔興すゐきようのことも、いよ/\紫紺しこんにしてくれと云ふ時にはもうはづかしくなつてめようかと迄思つたのであつた。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
自分の真実の血で、彼女のいつはりの贈物を、真赤に染めてやるのだ。そして、彼女の僅に残つてゐる良心を、はづかしめてやるのだ。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
きゝてオヽうれしや申し重四郎樣と云ながらと身をよせ其縁談そのえんだんの大津屋段右衞門の後家ごけにて縁女えんぢよはおはづかしながらと口籠くちごもり顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
翌朝よくてうかれはげしき頭痛づつうおぼえて、兩耳りやうみゝり、全身ぜんしんにはたゞならぬなやみかんじた。さうして昨日きのふけた出來事できごとおもしても、はづかしくもなんともかんぜぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
お前さんはモリエエルを領解して居るかい。お前さんの近頃の行為おこなひは、あれでモリエエル夫人としてはづかしくは無いかね
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
おびもせざる女片手かたて小児せうに背負せおひ提灯ちやうちんさげ高処たかきところにげのぼるは、ちかければそこらあらはに見ゆ、いのちとつりがへなればなにをもはづかしとはおもふべからず。
顔の見つともないのは、頭の悪いのと同じやうに恥づべき事で、葛城かつらぎの神様などは、顔が醜いのをはづかしがつて、夜しか外を出歩かなかつたといふ事だ。
はづかしさ、かなしさ、腹立はらだたしさ、——そのときのわたしのこころうちは、なんへばいかわかりません。わたしはよろよろあがりながら、をつとそば近寄ちかよりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ぢや言ふよ。ハクシヨン。」言ひかけて、はづかしくなつたごぼうは 大根の耳の所へ 口を持つて行つて
ゴボウ君と大根君 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
十手捕繩をはづかしめなかつた女ですから、見たところは弱々しい、出戻りとも思へぬ若くて美しいお品ですが、氣象きしやうや才智は、竝の男の三人分もあらうといふ女です。
はづかし氣も無く繰返す言葉を口にして自分の教養の無い事を正直にさらけ出した。
明日ははづかし のう姉さ
別後 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
たゞ、彼をあんなにはづかしめた瑠璃子の顔が、彼の頭の中で、大きくなつたり、小さくなつたり、幾つにも分れて、ともゑのやうに渦巻いたりした。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
此処ここの電気灯も十燭光位がいて居るのです。私は三度程ぐるぐるとおとこを廻つてからはづかしいものですから背中向きにあなたの枕許まくらもとへ坐るのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
鼠色の服を着けさふらて、帽は黒のおほへるをして甲板かんぱんに立ちさふらふに、私を不思議さうのぞかぬはなく、はづかしくさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
つたばかりで(考慮かんがへのないはづかしさは、れをいたときつなには心着こゝろづかなかつた、勿論もちろんあとことで)ときは……とつたばかりで、くちをつぐんだ。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「要らぬ所へ目がついたな。ほんの一寸のでもそんな所へ心をつたと思へば、明恵の思はくもはづかしい」
はらす其爲にやいばを振つてあだたふす實に見上げたる和女そなた心底しんてい年まだ二十歳はたちに足らざる少女の爲可きわざにはあらざりける男まさり擧動ふるまひこそ親はづかしき天晴あつぱれ女然れども人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ると、宛然まるで空々そら/″\しい無理むり元氣げんきして、ひて高笑たかわらひをしてたり、今日けふ非常ひじやう顏色かほいろいとか、なんとか、ワルシヤワの借金しやくきんはらはぬので、内心ないしんくるしくるのと、はづかしくところから
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さうした光景を見ただけで、瑠璃子の胸が一杯になつた。父が、此上兄をはづかしめないやうに、兄が大人しく出て呉れるやうにと、心ひそかに祈つてゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
もらひしやはづかしとてかくすべからずと懇切ねんごろたづねられければ吉三郎赤面せきめんしながらおほせの如く相違さうゐこれなく候なほまた菊を御呼出しのうへ御尋おんたづね下さるべしと申に大岡殿やがて同心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「隣の奴め馬鈴薯じやがテキと言つたな。」と思ふと、ハイカラ紳士は顔から火が出るやうにはづかしくなつた。
「いや、のな、商業しやうげふ取引上とりひきじやうわし貸金かしきんのあるものがまゐつたで。はづかしいわ、は、は。」
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひかる自身の物であればあのはづかしがる子がどうして知らない家へ拾ひにはひりませう、また貧しいと云つても自分の親には十や二十のまりを買ふだけの力はあると信じて居ますから
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
道中だうちうにも旅店はたごにも、我儘わがまゝばかりまをして、今更いまさらはづかしうぞんじます、しかしくるま駕籠かご……また夏座敷なつざしきだとまをすのに、火鉢ひばちをかんかん……で、鉄瓶てつびん噴立ふきたたせるなど、わたしとしましては
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私の作物さくぶつには生んだ親である自分にもまさつた愛を掛けて呉れる人達がすくなくも幾人かはある。私の分身の子には厳しい父親だけよりない、さうであるからなどヽはづかしい気もありながら思ふのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
たとひ膚身はだみけがさずとも、をつとれた、とひ、はづかしいのと、口惜くやしいのと、あさましいので、かツと一途いちづ取逆上とりのぼせて、おつや兩親りやうしんたち、をつとのまだかへらぬうちに、扱帶しごきにさがつて
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はづかしい事を思ひ切つて云ふやうに鏡子は隣の間の妹に声を掛けた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かへるても、さわがしいぞ、とまをされて、かせなかつたのである。其處そこくと、今時いまどき作家さくかはづかしい——みなうではあるまいが——番町ばんちやうわたしるあたりではいぬえてもかへるかない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はづかしさに、涙にむせび、声を震はせ、「こは殿にはものに狂はせたまふか、何故なにゆゑありての御折檻ごせつかんぞ」と繰返してはきこゆれども、此方こなた憤恚いかりに逆上して、お村のことばも耳にも入らず、無二無三に哮立たけりた
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
よく/\であつたとえて、はづかしさうに差俯向さしうつむく。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)