)” の例文
やがて大きなつめでひっかくようなおとがするとおもうと、はじめくろくもおもわれていたものがきゅうおそろしいけもののかたちになって
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ところで——番町ばんちやう下六しもろく此邊このへんだからとつて、いし海月くらげをどしたやうな、石燈籠いしどうろうけたやうな小旦那こだんなたちが皆無かいむだとおもはれない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
したからないが、かわいそうに……。だけど、ほうたいだらけのまっしろなあのかおには、ぞっとするわ。まるでけものみたいだもの
年老いた父が今麦稈むぎわら帽子をくぎにひっかけている。十月になっても被りつづけている麦稈帽子、それは狐がけたような色をしている。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
狸のそこねと言つてるんだよ。つまり君自身では一ぱし化けおほせた積りだらうが、世間の眼からは尻つ尾が見えるといふんだね。
この利慾のふかい武士へ、伊那丸いなまるというえさをもってりにきたのは、いうまでもなく、武士にけているが、八幡船ばはんせん龍巻たつまきであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どんなけ物でもすぐに正体を現わしてすくんでしまい、どんなものでも人の思うままになるという、世界に二つとない宝でした。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「それや、いざつていう時は、けるわよ。なんて、戯談なんか言つてる場合じやないのよ。重大問題の相談にのつていたゞきたいの」
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
そのなか一人ひとりが、ほんとうの人間にんげんで、一人ひとりが、魔物まものけたのだ。それはいくらおや兄弟きょうだいでも、見分みわけがつかないというはなしだ……。
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
毛皮服のミアルカ、格子縞チェックのマルゲリット。そして彼女はリゼットを見るや「おや!」とった。「けたね。」とも云った。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しかしこの女が墓の前に延び上がった時は墓よりも落ちついていた。銀杏いちょう黄葉こうようさみしい。ましてけるとあるからなおさみしい。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それも一人や二人じゃアねえ、数十人の女にだ! ただの女じゃアなさそうだ、からすのおけ、蝙蝠こうもりのお化け! と云ったような女だなあ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし近頃ちかごろではもうそんなへた真似まねはいたしません。天狗てんぐがどんな立派りっぱ姿すがたけていても、すぐその正体しょうたい看破かんぱしてしまいます。
敬二は、まるで狐にかされたような気もちになって、掘りあらされた空地あきちの草原をあちこちとキョロキョロとながめわたした。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ねこ死人しにんえてわたるとけるといつてねこ防禦ばうぎよであつた。せてけばねこわたらないとしんぜられてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もし、こゝに、おせいさんのおけが出て来たら、私云つてやる。一生、富岡さんとは別れてはやらないつて云つてやる……
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
あやかりものだよ、——ついでにもう少しその儘にしてゐてくれ。眞物の聟は陽が暮れると直ぐ此處に來て居るが、肝腎かんじんの嫁の支度が出來ない。
ベルを押して案内をうと、エデスが玄関に出て来た。四人の警官は、ガス会社の定期検査人にけていたので、わけなく家内へはいり込んだ。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
この話は、たちまち幾百里の山河さんがを隔てた、京畿けいきの地まで喧伝けんでんされた。それから山城やましろの貉がける。近江おうみの貉が化ける。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
途中の暗い横丁からけてでてやるぞと言ってやりたかったが、主人を初め、まだ熱心な相手が残ってるので話の調子はさほど折れもしなかった。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
クリストフが挨拶あいさつをしてる鳥に拳固げんこをさしつけ、この馬鹿者を、この腹声のけ物を、もって行っちまえと怒鳴ってるのを見た時、彼は生涯初めて
しかし、四十面相が制服警官にけて、逃げだしたなんて、まさか気がつくまい。四十面相はアドバルーンにのって、空をとんでいるはずじゃないか。
怪奇四十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
米友は不自由な足ながらからかさのおけのように後ろへ飛んで返って、以前の一間に置いてあった槍を手に取りました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
どうやら巧くけ終せそうだわい。そう調子をはずしたこともなかったようだ。私には役者の才能があるらしい。
メフィスト (新字新仮名) / 小山清(著)
一頭の牛から十五斤も二十斤もヒレ肉を出すような牛屋がありましたらばそれは必らず外の肉をぜるので今のようにレブロースがける事もありましょう。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
彼の「花」の観念の曖昧あいまいさにいて頭を悩ます現代の美学者の方が、かされているに過ぎない」(当麻)
我子のかたちけし惡魔とより外は見えざるぞ、それにても見事其處に居直りて、齋藤左衞門茂頼が一子ぞと言ひ得るか、ならば御先祖の御名立派に申して見よ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「このいのししにけて出たのは、まさか山の神ではあるまい。神の召使めしつかいの者であろう。こんなやつは今殺さなくとも、かえりにしとめてやればたくさんである」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「われわれは最近思いもつかないことに出逢ったよ。ロンドンのまんなかにもの屋敷を見つけたぜ」
あきれるじゃないの。文化ってどんな事なの? ぶんのおけと書いてあるわね。どうして日本のひとたちは、こんなに誰もかれも指導者になるのが好きなのでしょう。
冬の花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
何でも東京へ来てからは若い奥さんか何かにけて、乳母車を押しながら逃げまわっていたらしいんですが、そのうちにその筋の手がだんだん詰って来たもんだから
童貞 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
唐人のけの皮を一目で引んいだ、御眼力、お若えが恐れ入谷いりや鬼子母神きしぼじん……へっへっへっなんでごわす? ま、そのお話てえのをザッと伺おうじゃアげえせんか
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
奈良は奠都てんと千百年祭で、町は球燈きゅうとう、見せ物、人の顔と声とで一ぱいであった。往年おうねんとまった猿沢池さるさわのいけの三景楼に往ったら、主がかわって、名も新猫館しんねこかんと妙なものにけて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
月夜になるとな、蟹は馬鹿じゃせに、わがの影法師かげぼうしをおけかと思ってびっくりして、やせるんじゃ。やみ夜になると、影法師がうつらんさかい、安心してみがつくんじゃど。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
非人ひにんて、死者ししゃや、あしとらえてあななか引込ひきこんでしまうのだ、うッふ! だがなんでもない……そのかわおれからけてて、ここらの奴等やつら片端かたッぱしからおどしてくれる
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
またあかかんざしのふさは、ゆら/\とゆれるたんびに草原くさはらへおちては狐扇きつねあふぎはなけた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
さういふやさしげなことを耳にきいてゐるので、狐がかすと馬糞を御馳走だといつて食べさせたり、こやし溜へお湯だといつて入れるのといふ、汚い方のことなどは笑つてしまつて
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「なんだい、えらい噂つて。まさか夜中にけて出るといふのでも無いだらう。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
幼児が『おけえ』と言って声を細くし、両の掌を眼の上へあげると、大人が『怖い怖い』と、眼を掌で塞ぐ体を、幾度も執拗に強いるのと同じことを、将軍は登城のたびに繰り返した。
『七面鳥』と『忘れ褌』 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
たとえばね。あの窓の鉄棒を抜きとるにしたって、なにもそんなおけじみた力がなくたって、よくある手だが、まず二本の鉄棒に手拭てぬぐいかなんかを、輪のように廻してしっかり縛るんだ。
幽霊妻 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
化物的神佛ばけものてきしんぶつ實例じつれいは、印度いんど支那しな埃及方面えじぷとはうめんきはめておほい。釋迦しやかすでにおけである。卅二さう其儘そのまゝあらはしたらおそろしい化物ばけもの出來できるにちがひない。印度教いんどけうのシヴアも隨分ずゐぶんおそろしいかみである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
じょは活発な足どりで、つかつかと舞台の前面に歩み出で、しなやかな襟頸えりくびから肩の筋肉を、へびけようとする人間のように、妙にくるくると波打たせながら、怪しい嬌態しなを作って
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
化粧という字は、よそおうと書くが、全くもって化けさせる。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
若輩者じゃくはいものたぬきにでもかされたか」
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
みんなタコのおけのやうだ
けてひよつこりまち
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
早起はやおきの女中ぢよちうがざぶ/\、さら/\と、はや、そのをはく。……けさうな古箒ふるばうきも、ると銀杏いてふかんざしをさした細腰さいえう風情ふぜいがある。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
るとそれはおもいもつかない、大きなちゃがまに手足てあしえたものでしたから、見物けんぶつはみんな「あっ。」とって目をまるくしました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
やがて正気しょうきかえってから、これはきっと神様が意見をして下さるのか、それともきつねたぬきかされたのか、どちらかだろうと思いました。
泥坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しかし公卿理想にしろ、武士の戦争目的にしろ、あんな大量の血をながして、こんなきのこちまたに見る気でなかったのはもとよりだろう。