仕上しあ)” の例文
おつぎはそれから村内そんない近所きんじよむすめともかよつた。おつぎは與吉よきちちひさな單衣ひとへもの仕上しあげたとき風呂敷包ふろしきづゝみかゝへていそ/\とかへつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ところで、一刻いつこくはや仕上しあげにしやうとおもふから、めし手掴てづかみで、みづ嚥下のみおろいきほひえてはたらくので、時間じかんも、ほとんど昼夜ちうや見境みさかひはない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それゆえせめてのこころから、あたしがいつもゆめるおまえのお七を、由斎ゆうさいさんに仕上しあげてもらって、ここまで内緒ないしょはこんだ始末しまつ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
……わたしはこの温泉宿やどにもう一月ひとつきばかり滞在たいざいしています。が、肝腎かんじんの「風景」はまだ一枚も仕上しあげません。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「だが、何と言っても、職人は関東さね。江戸一円の、こう、気の荒っぽいやつに限らあね。土台どだい仕上しあげが違う——何をしてるッ! 早く行かねえかッ!」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それは差支さしつかえない。そなたをここまで仕上しあげるのには、守護霊しゅごれいさんのほうでもかげで一とかたならぬ骨折ほねおりじゃった。
このみせ主人しゅじんは、やはり小僧こぞうからいま身代しんだい仕上しあげたひとだけあって、奉公人ほうこうにんたいしても同情どうじょうふかかったのでした。信吉しんきち病気びょうきにかかると、さっそく医者いしゃせてくれました。
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
机の上を見ると、落第と云ふ字が美事につてある。余程ひままかせて仕上しあげたものと見えて、堅いかしの板を奇麗にり込んだ手際は素人しらうととは思はれない。深刻の出来である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この邊りには彼等のやうな人達は今もゐないが、これ迄にもなかつたさうで、彼等は三人乍ら、未だ口もまはらない内から本に親しみ、また彼等はいつもみんな獨學で仕上しあげたのであつた。
且つり且つはこび多くの勞力ろうりよくを費して仕上しあげたるものならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
ふさげない事になつてにもにもまぬかれぬ弊風へいふうといふのが時世ときよなりけりで今では極点きよくてんたつしたのだかみだけはいはつて奇麗きれいにする年紀としごろの娘がせつせと内職ないしよくの目も合はさぬ時は算筆さんぴつなり裁縫さいほうなり第一は起居たちゐなりに習熟しうじよくすべき時は五十仕上しあげた
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
勘次かんじはおしながどうにか始末しまつをしていた麥藁俵むぎわらだはらけて仕上しあげたばかりの藁俵わらだはらこめはかんだ。こめにはあかつぶもあつたがあらすこまじつててそれがつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わかいものをそゝのかして、徒労力むだぼねらせると何故あぜふのぢや。御坊ごばう飛騨山ひだやま菊松きくまつが、烏帽子えばうしかぶつて、向顱巻むかふはちまき手伝てつだつて、見事みごと仕上しあげさせたらなんとする。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あっしもきょうまで、これぞとおもった人形にんぎょうを、七つや十はこさえてたが、これさえ仕上しあげりゃ、んでもいいとおもったほど精魂せいこんうちんださくはしたこたァなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
うみ修行場しゅぎょうばはなしはこれでげますが、かくこの修行場しゅぎょうばわたくしにとりて最後さいご仕上しあげの場所ばしょで、そしてわたくしはこのとき神様かみさまから修行しゅぎょう終了しゅうりょうおおせをいただいたのでございます。
虎の皮だとかいふ周囲のものが、自然に一種一定の表情を引き起す様になつてて、其習慣が次第にほかの表情を圧迫する程強くなるから、まあ大抵なら、此眼付めつきを此儘で仕上しあげてけばいんだね。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だが、今度こんど仕事しごとばかりァそうじゃァねえ。この生人形いきにんぎょうさえ仕上しあげたら、たとえあすがへどをいてたおれても、けっして未練みれんはねえと、覚悟かくごをきめての真剣勝負しんけんしょうぶだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
賃錢ちんせんによつて土地とちふかくもあさくもはやくもおそくも仕上しあげることをつてた。竹林ちくりん開墾かいこんしたときかれぢたまゝつぼおほきさをたゞつのかたまりおこしたことがある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
イヤ一人ひとり小供こども満足まんぞく仕上しあげるにはなかなか並大抵なみたいてい苦心くしんではござらぬ。
かしこまりて何某なにがしより、鳥籠とりかごたか七尺しちしやくなが二尺にしやくはゞ六尺ろくしやくつくりて、溜塗ためぬりになし、金具かなぐゑ、立派りつぱ仕上しあぐるやう作事奉行さくじぶぎやう申渡まをしわたせば、奉行ぶぎやう其旨そのむねうけたまはりて、早速さつそく城下じやうかより細工人さいくにん上手じやうずなるを召出めしいだし
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)